日本郵便判決 格差是正を促す判断だ - 朝日新聞(2018年2月23日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13372372.html
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正社員と同じ仕事をしているのに、手当などに差があるのは労働契約法違反ではないか。
郵便局で配達・集荷業務を担当する日本郵便契約社員ら8人が同社を訴えた訴訟の判決で、大阪地裁は、一部の手当について正社員と同額を支給すべきだと判断した。
正社員と非正社員格差是正を促した注目すべき判決だ。
東京地裁も昨年9月、同社の契約社員と正社員の手当の差を不合理とする判決を出した。
日本郵便は従業員約40万人で、非正社員はその約半数にのぼる。ただちに他社と比べられないが、司法が相次いで是正を促した意味は重い。各社の労使が不合理な待遇差がないか点検し、改善する契機としたい。
同法20条は、有期契約で働く人と、正社員との間で仕事の内容や責任などが同じならば、労働条件で不合理な差をつけることを禁じている。
大阪地裁は、年末年始勤務手当、住居手当、扶養手当の三つについて、契約社員に払わないのは「不合理な差にあたる」と結論づけた。東京地裁は正社員が長期雇用のため、年末年始勤務手当と住居手当について、金額の差を容認したが、今回は同額にすべきだと踏み込んだ。
また東京地裁では争点にならなかった扶養手当についても、「扶養親族の有無や状況により支給されるもの」とした。
正社員との格差をなくそうという、昨今の労働現場の切実な声に応えた判断といえよう。
ただ判決は賞与の請求を退けるなど、すべて同一にすべきだとは述べていない。東京の判決も控訴審が続いている。
この問題は正社員の業務上の責任の重さや転勤、残業時間など様々な論点が絡み、業種や企業で条件も異なる。一般的に非正規と正規の待遇差がどこまで合理的といえるのか、線引きは定まっていないのが現状だ。
国の統計によると、非正規労働者は2千万人を超え、労働者全体の約4割に達する。
背景には、企業が雇用の調整弁として都合良く増やしてきた現実がある。格差の固定は働く意欲を減退させ、低賃金は消費の低迷にもつながる。正社員と非正社員との不合理な待遇格差の解消は、国の課題だということを忘れてはならない。
安倍政権は働き方改革のひとつに「同一労働同一賃金」を掲げ、関連法案の準備を進めている。理不尽な格差をなくし、非正規労働者の待遇をただすには何をすべきか。国会は多様な雇用形態の人々の声に耳を傾け、議論を深めてほしい。