(筆洗)一票の平等を実現するための選挙制度を根本から論じずに - 東京新聞(2018年2月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018022302000137.html
https://megalodon.jp/2018-0223-1031-08/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018022302000137.html

一九九七年に公開された米映画『ウワサの真相』は、政治風刺コメディーだ。原題は『ワグ・ザ・ドッグ』。「しっぽが犬を振る」という英語の言い回しを使ったタイトルだ。
再選を目指す米大統領に、性的スキャンダルが発覚する。投票日は目前。どう世間の耳目をそらすか。ロバート・デ・ニーロ氏が演じる情報操作のプロが考え出したのは、ありもしない戦争の危機をでっち上げること…、
「犬がしっぽを振る」のではなく「しっぽが犬を…」というのは、本末転倒。政治家の保身のために始めた策謀が、国家の危機を招いていく。『ワグ・ザ・ドッグ』というタイトル自体が痛烈な風刺になっているのだ。
これも、「しっぽが犬を振る」たぐいの話ではなかろうか。自民党が「一票の平等」をないがしろにするような改憲の案を出している。参院選では「一票不平等」を解消するために県をまたぐ「合区」が導入されたが、これをやめて、たとえ不平等が生じたとしても「違憲」とならないように、憲法を変えようというのだ。
法の下の平等」は民主主義国家の大きな柱の一つ。一票の平等を実現するための選挙制度を根本から論じずに、とりあえず改憲してしまえというのは、ちょっと住み心地が悪いからと、借家人が大黒柱を切ってしまうようなものではないか。
じっくり見続ける必要がある「カイケンの真相」だ。