合区解消改憲案 法の下の平等に反する - 東京新聞(2018年2月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018022002000146.html
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憲法改正によって「一票の不平等」を積極的に容認することになれば、憲法が定める「法の下の平等」に反する。議会制民主主義の根幹を脅かす権利の侵害だ。こうした改正は断じて認められない。
自民党憲法改正推進本部が参院選選挙区の「合区」解消に向けた改憲条文案を了承した。衆参両院の選挙について定める四七条に大幅に加筆し、参院では三年おきの改選ごとに各都道府県から一人以上を選出すべきだと定める内容である。
参院では「一票の不平等」縮小のため、二〇一六年の選挙から、別の選挙区だった徳島・高知、鳥取・島根がそれぞれ一つの選挙区に「合区」された。
しかし、合区対象の県関係者や全国知事会などは「地方の声が国政に届きにくくなる」と反発。自民党は合区解消を含む改憲四項目を一七年衆院選公約の重点項目に挙げていた。四項目中、条文案がまとまったのは初めてだ。
国土の均衡ある発展のために、地方の声を国政に反映させることの重要性は十分に理解するが、憲法上の要請であり、議会制民主主義の根幹を成す「法の下の平等」をないがしろにしていいわけはあるまい。自民党の条文案からは、自らの地盤である地方の議席を維持する思惑が見えなくもない。
条文案には衆院選の区割りについても人口を基本としつつ、行政区画や地域的一体性などを総合的に勘案することも盛り込まれた。
仮にこの改正が実現すれば、衆参両院の選挙でどんなに「一票の不平等」が広がっても、違憲性を問えなくなる。特に参院が地域代表の性格を強くすれば、国会議員を「全国民の代表」と定める四三条とも相いれない。
与党の公明党が「一票の価値の平等が最も重要な選挙制度の基本ではないか」(井上義久幹事長)と慎重姿勢を示すのも当然だ。
もちろん参院を地域代表とすることも一案ではある。そのためには衆参両院の役割分担や権限、選挙制度を含め、二院制の在り方を根本から議論することが前提だ。そうした議論を経ずに、改憲で合区解消を図ろうとするのはあまりにも短絡的である。
「一票の不平等」を解消する参院選挙制度改革については公明党が全国を十程度、共産党が九ブロックに分ける案を提唱している。
自民党のように憲法上の要請ではない都道府県に固執する必要がどこにあるのか。法律で対応できることを怠り、やみくもに改憲を急ぐとしたら本末転倒である。