http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017050902000133.html
http://megalodon.jp/2017-0509-0920-32/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017050902000133.html
フランス語で最も長い単語は長らく、二十五文字を要するこの言葉とされてきた。anticonstitutio (アンティコンスティテュシオ)nne(ネ)ll(ル)eme n(マン)t。書き写すのもいやになるが、和訳すれば、わずか六文字で済む。「憲法に反して」という意味である。
この長い長い単語の出番が増えるのではないか。そんな心配もあったのが、仏大統領選である。決選投票を戦ったルペン氏は改憲を公約にしていた。憲法に「フランス人を優先する」との文言を加えようとしていたのだ。
一七八九年のフランス人権宣言は第一条にうたう。<人は、自由で権利において平等なものとして生まれ、かつ、自由で権利において平等なものであり続ける>(『世界憲法集』岩波文庫)
あくまでも主体は、「フランス人」ではなく「人」である。すべての人の自由と平等をうたい上げたからこそ、人権宣言はフランスのみならず人類の共通遺産となった。
そしてこの宣言はフランスにあって今なお憲法の一部として生きているから、ルペン氏が当選したら「フランス人優先」をめぐり違憲論議が起きたに違いない。
ルペン氏は敗れたとはいえ、グローバル化の中で広がる格差にあえぐ人たちによる異議申し立ては、今回の選挙でも大きな声となった。私たちは本当に自由で平等なのか。そういう問い掛けが「人権宣言の国」をこれからも突き動かしていくのだろう。