(筆洗)共生とは何か。 - 東京新聞(2017年4月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017042602000132.html
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共生とは何か。動物生理学の研究者・本川達雄(もとかわたつお)さんは、近著『ウニはすごい バッタもすごい』(中公新書)で、こう定義している。
<異なる二種の生物が、同じ場所で互いに緊密な結びつきを保って生活していること>。共生することで、どちらの種も利益を得ることを「相利共生」と呼び、一方のみが利益を得れば「片利共生」と呼ぶそうだ。
その相利共生のすばらしい例が、サンゴと植物プランクトンの一種・褐虫藻(かっちゅうそう)の支え合いだという。サンゴは褐虫藻が安全に暮らせる丈夫な家を提供している。サンゴが動物なのに樹木のような形をしているのは、褐虫藻光合成をしやすくするためだ。
褐虫藻光合成でつくりだした酸素や栄養を使ってサンゴは生き、サンゴが吐き出す二酸化炭素などを使い褐虫藻は生きている。この絶妙な共生こそがサンゴ礁の豊かな生物多様性の礎(いしずえ)となっているのだ。
そういう豊かな海の中でも、日本生態学会や日本魚類学会など十九の学会が「我が国で最も貴重な海域の一つ」「世界に誇るべきもの」として保全を求めたのが、沖縄の大浦湾だ。だが、そこに基地を造るための埋め立て工事がきのう、始まった。
安倍首相はかつて国会で、日本全体を「多様性を尊重する共生社会に変えていく」と語っていたが、首相が言う共生とは、どんな意味なのか。潰(つぶ)されゆく「共生の海」は何を物語るか。