(筆洗)「欅坂46」の黒い衣装がかつてのナチス親衛隊の軍服にそっくりだとの批判の声 - 東京新聞(2016年11月2日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016110202000132.html
http://megalodon.jp/2016-1102-0955-20/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016110202000132.html

古着屋で一着の英国軍の軍服を見つけた。実にカッコいい。これを着て、町に出ると、警官に呼び止められ、「脱げ」とこづかれた。「それを着て、戦友は死んでいった」
軍服を着ていたのは伝説のギタリスト、ジミ・ヘンドリックス(一九四二〜一九七〇年)。若者の間に「ミリタリー・ルック」が流行した六六年ごろのロンドンでの出来事で、伝記映画の中にもその場面が描かれていた。
ギタリストにはとんだ災難だが、警官の思いもまったく分からぬわけではない。確かに、人が何を着ていようが、咎(とが)め立てる権利はない。それは表現の自由である。ただその服装を見て、何かを思い出し、傷つく人もいる。とりわけ人の命を奪い、奪われた軍服である。
黒い制帽にマント。日本のアイドルグループ「欅(けやき)坂46」の黒い衣装がかつてのナチス親衛隊の軍服にそっくりだとの批判の声が上がっている。英国の大衆紙が伝えた。残念ながら、似ている。
まさか「信奉者」ではあるまい。されど、その衣装にかつての残虐行為を連想し、不快に思う方もいる。過去の蛮行が忘れ去られ、若い女性がそれを着て踊る。そういう無邪気な時代に、寒けを覚える方もいる。欧州は今なお、敏感である。
「騒動」にも利があるとすれば、これがなぜ、問題になっているのかを、日本の若い方にも知ってもらい、考えてもらうことかもしれぬ。