(筆洗) カクテルの「王様」、マティーニの作り方はおおよそジンが「三… - 東京新聞(2018年9月3日)

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カクテルの「王様」、マティーニの作り方はおおよそジンが「三」に対して、ベルモットが「一」でこれよりもジンの割合が高いものがドライ・マティーニとなる。
ヘミングウェーの小説「河を渡って木立のなかへ」にかなり辛口のマティーニを飲む場面がある。ジンが「十五」でベルモットが「一」。ほとんどジンである、そのカクテルの名は「モンゴメリ将軍」。第二次世界大戦で活躍した英陸軍の軍人。なんでもこの将軍、相当慎重な人らしく、味方と敵の戦力比が「十五」対「一」にならないと攻撃しなかったとか。
もっと辛口のマティーニがご所望ならばその名は皮肉をこめてこうなるか。「日本共生社会」。中央省庁が障害者雇用者の数をごまかしていた問題である。
ひどいバーテンダーがいたもので機会の開かれた社会のため、働く人のうち一定の割合で障害者を雇う法令を定めたにもかかわらず、実際は雇っていなかった。ただでさえ、その比率は低いのに、入れたふりをして入れていたのはその半分。これが「共生社会」の現実なのか。雇用を待つ障害者には無情の仕打ちである。
既に亡くなった人を障害者として算入していたケースもあったと聞く。ごまかしのカクテルを障害者雇用の手本となるべき中央省庁が作った。
飲めば、気分が沈み、大声で泣きだしたくなる、その悪い酒。一から作り直さねばならない。