(筆洗)「私たちが挑むべきは、不可能にみえることを可能にする技としての政治の実践です」 - 東京新聞(2016年7月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016073002000141.html
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四十七年前、米国の女子大の卒業式のスピーチで、こう語った学生がいた。「私たちが挑むべきは、不可能にみえることを可能にする技としての政治の実践です」。ヒラリー・クリントンさん(68)だ。
民主党の大統領候補になり、女性が米国の大統領になるという夢にまた一歩近づいたが、敗れたバーニー・サンダースさん(74)もまた「不可能にみえることを可能にする政治力」を見せつけた。
米政界にあって異端の民主的社会主義者で、自他ともに認める「はぐれ者」である。大統領選への出馬を宣言した時、誰がここまで躍進すると思ったか。だが、彼はこう語っていた。
「大多数のアメリカ人は今日、はぐれ者なのだ」。経済や政治のありようを決める過程から疎外され、貧困と無力感にさいなまれる人々。そんな人々を結び付け、自ら声を上げるようにする選挙運動をくり広げられれば、「私たちが誰一人、もはやはぐれ者ではなくなるように、一緒に政治と統治をつくりかえることができる」(『バーニー・サンダース自伝』)
学費が高く、学生ローンを借りるしかない。そうして卒業しても、待っているのは低賃金の非正規労働…。そんな若者らが彼の言葉に呼応し、大旋風を起こしたのだ。
サンダースさんは大統領選では敗れた。しかし、「はぐれ者」旋風は米国のみならず世界に、新風を吹き込んだようである。