(筆洗)低賃金での過酷な労働 - 東京新聞(2017年7月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017072002000135.html
http://megalodon.jp/2017-0720-0915-06/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017072002000135.html

トランプ大統領が就任演説で「私たちが守るのは、二つの単純なルールです。米国製品を買い、米国人を雇うということです」と宣言して、半年。いま、米国は「メード・イン・アメリカ・ウイーク」の最中だそうだ。
ホワイトハウスに並べられたギブソン社のギターやキャタピラー社の重機など米国製品を前に、大統領はこう言って拍手を浴びた。「米国の製造業を復活させるということは、富の復活だけではないのです。私たちのプライドをも復活させるのです」
この言葉にうなずくならば、米国民は大統領の長女イバンカさんの名を冠したブランドの靴は買うべきではないだろう。何しろそれは「メード・イン・チャイナ」なのだ。
イバンカ・トランプ」ブランドの靴を作る工場では、無給の長時間残業などが当たり前のように行われ、その実態を調べていた人権団体の調査員らが中国当局に逮捕される騒ぎも起きた。
イバンカ・ブランドの服を作るインドネシアの工場では、女性労働者への虐待が横行しているというから、汗を流して働く人々のプライドには、関心がないのだろう。
しかし、「イバンカ・ブランド」は例外ではなかろう。私たちが手にする格安の電化製品や衣服の陰にも、低賃金での過酷な労働が潜んでいるのではないか。そんな疑問から目をそらしたまま、トランプ一家の偽善を笑うわけにはいかぬ。