(いま読む日本国憲法)(20)第26条 教育の機会、厚く保障 - 東京新聞(2016年7月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016072902000217.html
http://megalodon.jp/2016-0730-1014-59/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016072902000217.html


万人が教育を受けられる権利と、保護者が子どもに教育を受けさせる義務を定めた条文です。人の成長や人格形成にとって欠かせない教育の機会を、違う角度から念入りに保障しているわけです。
二六条は、義務教育を無償とすることも明記しています。義務教育は、現行制度では小中学校の九年間。無償とは授業料を徴収しないこととされています。

この憲法の精神に基づき、教育の基本方針を定めた法律が、一九四七年に制定され「教育の憲法」などと呼ばれてきた教育基本法です。第一次安倍政権時代の二〇〇六年に初めて改正され、「我が国と郷土を愛する態度を養う」など愛国心の理念が書き込まれましたが、愛国心の押しつけとの批判が出ました。

自民党改憲草案は、国が「教育環境の整備に努めなければならない」との義務規定を二六条に書き加えています。草案Q&Aは「施設整備や私学助成などについて、国が積極的な施策を講ずること」を想定していると説明していますが、気になるのは「教育が国の未来を切り拓(ひら)く上で欠くことのできないものであることに鑑み」という部分。個人の成長より、国家の利益になるための教育を追求するようにも読めます。

ちなみに日本国憲法で「義務」という言葉が出てくるのは、三大義務とされる教育、勤労、納税について定めた二六、二七、三〇条と、公務員らの憲法尊重擁護義務を定めた九九条の四カ条だけ。憲法が、国家権力から国民の権利を守ることを主眼にしているためです。自民党内には「義務を忘れて権利だけ主張していては、社会生活は成り立たない」との意見が強く、改憲草案にも多くの義務が追加されています。



自民党改憲草案の関連表記(新設部分)
国は、教育が国の未来を切り拓く上で欠くことのできないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない。