いま読む日本国憲法(52)第89条 公金の支出に制限 - 東京新聞(2017年7月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2017071602000145.html
https://megalodon.jp/2017-0716-0958-53/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2017071602000145.html


公金など公の財産の支出に制限をつけた八九条は、戦力不保持を定めた九条と自衛隊の関係と同じように、憲法の文言と現実の間に隔たりがあるのではないかと議論になってきた条文です。
前段は、宗教団体などへの国の財政援助を禁じています。旧憲法下で国家神道軍国主義を支えた反省に基づく政教分離原則(二〇条)を、財政面から裏付ける規定で、特に問題になっていません。
議論となっているのは後段の「公の支配に属しない」教育事業への財政援助を禁じた部分。素直に読めば、私立学校への助成は違憲と受け取れます。
ポイントは「公の支配」の解釈。私立学校が「公の支配」に属しているなら私学助成は合憲、属していなければ違憲となります。
政府はもちろん合憲という立場です。私立学校も学校教育法などの法的規制を受けているからです。これに対し、国や自治体が関係する予算の執行を監督し、人事にも関与するような厳格な意味での「公の支配」とは言えないため、違憲という考えもあります。
このため憲法論議では、私学助成は今でも合憲なので改憲は必要ないという主張と、私学助成ができることを憲法上明確にすべきだという主張があります。
自民党改憲草案は後者の立場。「公の支配に属しない」という文言を、国や自治体の「監督が及ばない」に書き換えています。国の監督が及ぶ私学助成は合憲と明確にするためです。
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憲法の主な条文の解説を、随時掲載しています。
自民党改憲草案の関連表記
(1)公金その他の公の財産は、第二〇条第三項ただし書に規定する場合を除き、宗教的活動を行う組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため支出し、又はその利用に供してはならない。
(2)公金その他の公の財産は、国若しくは地方自治体その他の公共団体の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対して支出し、又はその利用に供してはならない。