いま読む日本国憲法(57)第96条 改憲条件 厳しく規定 - 東京新聞(2017年8月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2017080802000179.html
http://megalodon.jp/2017-0808-0925-24/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2017080802000179.html


日本国憲法第九章「改正」は、この条文だけです。改憲手続きを定めた九六条は、改憲が現実味を帯びてきた今、注目されることが多い条文です。
国立国会図書館の調査では、一九四五年の第二次世界大戦終結から二〇一六年末までに米国は六回、フランスは二十七回、ドイツは六十回、イタリアは十五回、それぞれ改憲を行っています。海外では改憲は珍しいことではありません。
これに対して日本国憲法は、一回も改憲されていません。九六条の規定が、高いハードルとなっていることも理由の一つです。
通常の法律制定は、衆参両院で過半数の賛成を必要としているのに対し、改憲の場合、まず各議院の総議員の「三分の二以上」の賛成が必要。さらに、改憲案を発議して、国民投票で「過半数」の賛成を得る必要があります。
こうした通常の法律制定より改正手続きが厳しい憲法を「硬性憲法」といいます。日本国憲法はその典型です。国の最高法規を変えるなら、より多くの議員が賛同できるまで議論を尽くすべきだという意味が込められています。
自民党改憲草案で、発議に必要な衆参両院の賛成を「三分の二」から「過半数」に緩和することを打ち出しました。草案Q&Aは「主権者である国民に提案される前の手続きをあまりに厳格にするのは、国民が憲法について意思を表明する機会が狭められる」などと説明しています。
安倍晋三首相が一二年の政権復帰後、改憲項目としてまず目を付けたのも九六条。草案と同様に、発議要件を過半数に変えるよう訴えましたが、手続きから変えようとする姿勢が「裏口入学」と批判されて断念しました。
一六年の参院選を経て、改憲に前向きな勢力が戦後初めて両院で三分の二以上を占めました。首相は在任中の改憲を目指しており、現実的な政治課題となりました。
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憲法の主な条文の解説を、随時掲載しています。
自民党改憲草案の関連表記
第一〇〇条
(1)この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。
(2)憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、直ちに憲法改正を公布する。