(筆洗)「木綿のハンカチーフ」(太田裕美さん)や「赤いスイートピー」(松田聖子さん)などをお書きになった作詞家の松本隆さん - 東京新聞(2015年12月17日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015121702000130.html
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木綿のハンカチーフ」(太田裕美さん)や「赤いスイートピー」(松田聖子さん)などをお書きになった作詞家の松本隆さん(66)。ことし作詞活動四十五年だそうだ。松本さんの作品に過ぎし日を思う方もいるだろう。太田さんの「振り向けばイエスタディ」(一九七八年)。大ヒットとはいえないが、短編映画を観(み)ているような松本さんらしい詞である▼高校の時、交際していた二人が数年後、街で再会する。女性は近く結婚するという。相手が優しいやつならいいさと強がる半面、男は女性のことが今も気になる。<女は名前をなぜ変えるのか。この次、会ったらなんて呼ぼうか>
結婚すると女性は姓をなぜ変えるのか。誰もが抱く疑問をめぐる訴訟で、最高裁大法廷は夫婦別姓を認めていない民法の規定について違憲ではないと判断した。判決は下された。されど旧姓を使えず思い悩む方がいる。通称を使用することに煩わしさを感じる方がいる。その現実は消えていない。
【夫婦は、婚姻に際し夫か妻の姓を名乗る】。民法の規定である。「夫か妻の姓」となっているが、実際、結婚後、夫の姓を選択する夫婦の割合は96%。その数字は二人で話し合った結果か。ならわしや何となくで女性ががまんしているのだとすれば、目を背けるわけにいかぬ。
「女はなぜ変えるのか」。判決にも問われ続けるべき疑問は残っている。