夫婦とは家族とは…民法の岐路 別姓など最高裁初判断へ-朝日新聞(2015年2月19日)

http://www.asahi.com/articles/ASH2L5W0GH2LUTIL041.html?iref=com_alist_6_02
http://megalodon.jp/2015-0219-1041-56/www.asahi.com/articles/ASH2L5W0GH2LUTIL041.html?iref=com_alist_6_02

■置き去りにされた課題
96年には結婚にかかわる規定について、法制審議会の改正案が出された。この中でも、選択的夫婦別姓の導入と再婚禁止期間の見直しは、置き去りにされた課題だったといえる。

先に進んだのは、婚外子差別の撤廃だった。

保守系議員を中心とした反対で国会が動かない中、最高裁は2013年9月、結婚していない男女から生まれた婚外子の相続を婚内子の半分とする民法の規定について、「家族の形態も著しく多様化し、国民の意識の多様化も大きく進んだ」とし、「法の下の平等を定めた憲法に違反する」と結論づけた。今回と同様、大法廷で審理した後の判例変更だった。その後、国会で民法が改正され、婚外子差別の規定はなくなり、相続は同等になった。

離婚時の養育費と面会交流の取り決めについても、11年に改正されている。

一方、選択的夫婦別姓への反対は根強く、国内の家族観も揺れた。政府の世論調査では、別姓の導入について、96年には「反対」が39%で「容認」32%を上回っていたが、01年には容認42%、反対30%に逆転。06年には再び反対が増えた。13年に実施した朝日新聞世論調査でも、賛成46%、反対47%と伯仲している。

この間、法が現実の家族の形に合わなくなってきたことで、社会問題も浮き彫りになった。再婚禁止規定とつながっている民法772条では、「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」と推定する。このため、夫からの暴力などで逃げてきた女性が別の男性との間の子どもの出生を届けず、無戸籍になっている例がある。離婚から300日以内の出生で、前夫の戸籍に記されるのを恐れるためだ。法務省は14年に初めて調査を実施。無戸籍の人が全国で279人いることが分かった。

国際社会では男女平等の機運が高まり、これまで国連の女性差別撤廃委員会などが繰り返し、この2項目を含む民法の規定を改めるよう日本に勧告。日本政府は毎回、民法の改正案はまとめたが、国会に提出できていないことを報告するにとどまっている。

■自民は慎重、民・共・社は前向き
夫婦別姓制度の導入や、再婚禁止期間の廃止・短縮をめぐって、自民党内には「伝統的な家族が壊れる」といった反対が根強く、見直しには慎重だ。一方、民主党共産党社民党には前向きな議員が多い。

朝日新聞東京大学谷口将紀研究室が昨年末の衆院選時に行った共同調査では、当選した議員のうち選択的夫婦別姓に賛成が30%、反対45%だった。政党別にみると、自民は賛成が8%にとどまり、反対は65%に上る。逆に民主は賛成が68%、反対は8%だった。

自民党では02年、野田聖子前総務会長らを中心に「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」が発足。「職業生活上の事情」などがある場合、家庭裁判所の許可を得て、例外的に夫婦別姓を認める議員立法の提出を模索した。しかし、党内の了承が得られず断念。その後も、本格的な議論にはなっていない。

再婚禁止期間の短縮についても07年の第1次安倍内閣時に、自民党内に民法改正を目指す動きもあったが、これも先送りされた。安倍晋三首相は保守的な家族観を重視しているとされ、自民党政調幹部の一人は18日、「最高裁の判断が出たわけではない。しばらくは様子見だ」と語った。

一方、民主党は政権にいた10年、千葉景子法相や社民党福島瑞穂男女共同参画担当相らを中心に、選択的夫婦別姓の導入、再婚禁止期間の100日への短縮などを盛り込んだ民法改正案を国会に提出しようとした。しかし、社民とともに連立を組んでいた国民新党が反対。民主内の一部に異論もあって断念した。

当時、野党だった自民党は10年夏の参院選の政策集に「夫婦別姓を選択すれば、必ず子どもは両親のどちらかと違う『親子別姓』となります」「日本の家族の絆を守ります」などと記し、反対した。

民法の条文
民法733条1項 女は、前婚の解消又は取消の日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない
民法750条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する