(筆洗)クリスマスの早朝、目が覚める。枕元に玩具が置いてある。そう…-東京新聞(2014年12月17日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2014121702000141.html
http://megalodon.jp/2014-1217-0925-47/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2014121702000141.html

クリスマスの早朝、目が覚める。枕元に玩具が置いてある。そういう思い出がある人は幸せである。世の中には目が覚めても、サンタクロースがうっかりと配り忘れたせいで、枕元にからっぽな空間を見る子もいる。
「トイドライブ」という方法を聞いた。「おもちゃの運び屋」とでも訳せばいいのか。米ニューヨーク市のホームレス支援者団体が毎年、この季節に行っている。
同市のホームレス用のシェルターには約二万五千人の子が住んでいる。当コラムを子どもが目にする可能性もあるので、このあたりの書き方は気をつけたいが、サンタはここに住む子どもたちへの玩具をよく忘れるそうなのだ。
そこでサンタに代わって玩具を贈ってくれる方を募る。子どもたちは玩具を手にできる。かの国にはこういう仕組みが整っている。
日本の子どもの貧困率約16%。六人に一人の子どもの聖夜を気にしている。「一年で最も楽しいシーズン」。アンディ・ウィリアムスの陽気なクリスマス曲を聴いても気分の晴れぬ家もあろうが、どの子にもクリスマスの「魔法」を記憶する、権利がある。
格差社会の中、富をうまく再分配できないのであれば、せめて「温かさ」を再分配できる仕組みをこの国にも本格的に用意できないか。誰かを思いやる心。「斯(か)く思ひ斯く祈りてクリスマスの夕は我等(われら)に取りては実際の天国である」(内村鑑三