沖縄で自民全敗 「県内」拒否の民意再び:社説-東京新聞(2014年12月17日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014121702000144.html
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衆院選で三百近い議席を維持した自民党は、沖縄県では四つの小選挙区すべてで敗北した。米軍普天間飛行場の「県内」移設を拒否する民意が再び示された。政府は移設を強行してはならない。

四十七都道府県で、自民党公認候補が一人も当選しなかった県が二つある。一つは山梨県、もう一つが沖縄県だ。沖縄1区では共産党候補が激戦を制した。同党が小選挙区議席を得たのは十八年ぶりである。

自民党衆院選公約に、普天間飛行場宜野湾市)の名護市辺野古への「県内」移設推進を明記した。自民党の全敗はこの公約が沖縄県では拒否されたことを意味する。

二〇一二年の前回衆院選で、党本部は普天間問題を公約に明記せず、沖縄の同党公認候補はそれぞれ「県外」移設を訴え、四小選挙区のうち三小選挙区で当選した。

しかし、党沖縄県連は昨年十一月、安倍晋三首相率いる首相官邸や党本部の圧力に屈して県内容認に転換。公約破りの議員たちは辞職せず、国会に居座り続けた。

今回、沖縄の自民党候補は全員が比例代表九州ブロックで復活当選した。しかし、小選挙区での敗北は、公約破りに対する県民の厳しい審判にほかならない。重く受け止めるべきである。

一月の名護市長選では辺野古移設に反対する現職が、賛成の自民党推薦候補を破った。十一月の県知事選では県内移設反対を掲げた翁長雄志那覇市長が県内容認に転じた仲井真弘多知事に勝った。

衆院選での県内拒否は、県民による今年三度目の意思表示だ。県内反対の揺るぎない民意と受け止めるべきだろう。

しかし、安倍首相は衆院選開票翌日の記者会見で「辺野古移設は唯一の解決策であり、その考えに変化はない」と言い切った。

政府がこのまま辺野古への県内移設を強行すれば、沖縄との溝は深まるばかりだ。「この道しかない」というかたくなな態度では、普天間飛行場の危険性は、いつになってもなくならない。

沖縄県には在日米軍基地の約74%が集中する。騒音や事故、米兵の犯罪など負担は過重だ。基地押し付けに「構造的差別」を感じ始めた県民は県知事選を機に、保守、革新の対立を超えた「オール沖縄」で結束し始めた。

衆院選でもこの枠組みは続き、オール沖縄自民党の対立構図が鮮明になった。沖縄での政治状況の抜本的な変化である。安倍政権は見誤ってはならない。