平和あっての冒険 少年、中年の「ズッコケ三人組」描く 那須正幹さん(児童文学作家):土曜訪問-東京新聞(2014年11月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/doyou/CK2014110802000234.html
http://megalodon.jp/2014-1110-1042-29/www.tokyo-np.co.jp/article/culture/doyou/CK2014110802000234.html

子どものころ、何より夢中になって読んだ本がある。一九七八年に刊行が始まった「ズッコケ三人組」シリーズ(ポプラ社)だ。主人公のハチベエハカセ、モーちゃんの三人が繰り広げる冒険に胸を躍らせた。二〇〇五年からは後日談の「ズッコケ中年三人組」シリーズが書き継がれているが、来年で完結予定という。記者の人生とほぼ同じ期間、三人組を書き続けた作者の話が聞きたくて、山口県防府市那須正幹(まさもと)さん(72)を訪ねた。

それいけズッコケ三人組 (こども文学館 (3))

それいけズッコケ三人組 (こども文学館 (3))

ズッコケ中年三人組age48

ズッコケ中年三人組age48

那須さんの創作活動の原点には、三歳の時に広島で被爆した体験がある。「三人組があれだけ元気に駆け回れたのは、日本が平和で民主主義の国だから」。ズッコケシリーズでは意識して戦争関連の話を扱わなかったが、戦後の広島の復興を描いた「ヒロシマ」三部作など、戦争や原爆に関する著作は数多い。この夏には、少年兵をテーマにした連作短編を書き上げた。

「戦争児童文学というと、どうしても空襲とか疎開とか、被害者の立場で描かれる。でも、本当は加害者の立場に立たされた子どももおるんじゃないか。戦争というのは被害だけじゃない、加害の責任もあるわけだから」

主人公は、戊辰戦争での奇兵隊二本松少年隊、太平洋戦争の満蒙(まんもう)開拓青少年義勇軍沖縄戦鉄血勤皇隊に参加した少年たち。敵兵を殺し、自らも殺される過酷な戦場を綿密な取材で描いた。「子どもたちが想像力を働かして、次の世代が同じ体験をするのは嫌だと考えてくれれば」と願う。

約十年前から温めていたテーマ。七月の集団的自衛権の行使を認める閣議決定に執筆期間が重なったのは「たまたま」だというが、思うところはある。「僕らが子どもの時、大人はあんな戦争になんで反対せんかったんじゃろうと思いよった。でも今まさに次の世代から、『なんであんなこと認めたのか』と言われるんじゃないか。戦争の記憶が残っとる世代の責任として、筆の力でできることをやっておきたい」