少年厳罰化 法の理念にかなうのか-北海道新聞(2014年2月14日)

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/521308.html
http://megalodon.jp/2014-0217-0919-57/www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/521308.html

少年の健全育成を目的に保護と教育を優先する。こうした少年法の理念が形骸化される懸念を拭えない。

少年の更生や再犯防止によい結果をもたらすのか。国会は審議を尽くす必要がある。

政府は少年法改正案を閣議決定し、国会に提出した。罪を犯した少年に言い渡す有期刑(懲役・禁錮)の上限を現行15年から20年に引き上げるなど厳罰化が柱だ。今国会での成立を目指しているという。

成人(有期刑上限30年)に比べ軽すぎるという被害者遺族らの声を受けて法相が一昨年9月、法制審議会に諮問し、昨年2月、答申を得た。

刑期を考える上で重要なのは同じ1年でも、成長過程の少年にとっては成人よりずっと長く、持つ意味も重いという点だ。罪を犯した少年を社会から隔絶する期間を長くすればかえって社会復帰を難しくする。

だが、具体的検討のために法制審に設置された部会は4回の会合で議論を終えた。厳罰化が少年の心の発達や更生に与える影響について心理学や精神医学などの専門家に意見を聴いていない。

不十分と言わざるを得ない。

国会には専門家らを参考人招致し、その意見にじっくりと耳を傾けた上で、論議を深めるよう求めたい。

少年犯罪は心の未熟さや成育環境などが影響し、教育や生活環境を変えることで早期立ち直りが可能と考えられている。

このため、少年法は刑事責任を問う場合も刑期などで成人と異なる措置を定めている。

無期刑相当でも、犯行時18歳未満なら10〜15年の有期刑に緩和できるとする規定もその一つだ。改正案はこの上限を引き上げ、10〜20年の刑を言い渡せるようにする。

立ち直りに応じた社会復帰実現のため、判決時20歳未満の少年に対し刑期に幅がある「不定期刑」を言い渡す場合の規定も改める。短い方の刑期と長い方の刑期の各上限を5年引き上げて10年、15年とする。

こうした内容に疑問は尽きない。成人との「量刑格差」をどう考えるか。仮にそれを縮める必要があるとしても刑期上限の5年もの引き上げは妥当か。国会は法案を詳細に検討し必要な修正を加えるべきだ。

被害者遺族の悲しみや憤りを社会で共有し、そこから少年犯罪を考える視点は大切だ。しかし、厳罰化では何も解決しない。

少年が深く反省し、罪を償い、更生を促す環境を整えるための課題は山積している。少年刑務所での矯正や教育プログラムの充実、出所後の就労、生活支援の拡大などだ。立法府には、これらを実現する使命と責任があることを忘れてはならない。