少年法の厳罰化  受刑の実態みて慎重に-京都新聞(2014年2月9日)

http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20140209_3.html
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犯行時18歳未満の少年に言い渡す有期刑の上限を15年から20年に引き上げるなど、厳罰化を柱とする少年法改正案を政府は閣議決定し、今国会での成立を目指している。刑期に幅を持たせて言い渡す「不定期刑」の長期の上限も、10年から15年に引き上げる。

犯行時17歳の少年が懲役20年を刑務所で過ごせば、出所時には37歳になる。20年たてば社会情勢は一変している。社会復帰が大人以上に困難になり、再犯のリスクがかえって高まるとの懸念の声が出ている。慎重な審議を望みたい。

少年犯罪は、刑期を長くすることだけでは解決しない。

犯罪抑止の観点だけでなく、少年が心から罪と向き合うためには何が必要なのか考えることが大切だ。少年刑務所での処遇の在り方など、実態を踏まえて幅広く議論する必要がある。

改正案がまとまる前、法制審議会で議論していた段階で、少年犯罪の遺族は「きちんと事実認定をして、それに見合った罰を与えますよと示してほしい」「厳しい言葉で少年を問い詰めてほしいと言っている訳ではありません」と訴えた。

犯罪被害者の重い指摘を「厳罰化か加害少年の人権か」といった単純な図式で捉えては不十分だろう。うそが通用しないことを子どもに分からせ、犯罪の結果の重大さに気付かせることは、更生の出発点だ。

改正案は、不定期刑の上限などを引き上げる一方、国選付添人の弁護士が少年審判に立ち会える対象を、殺人や強盗だけでなく、窃盗や傷害にも広げることも盛り込んだ。この点は評価したい。少年の供述は、子ども間の力関係などに左右されがちだ。被害回復や事実認定の強化に資する。

現行の少年法不定期刑と仮釈放の違いは分かりにくい。少年にとっては、なおさらだ。成人ならどの程度の量刑に相当するかを明示することは更生意欲の面からも大切だが、量刑を機械的に引き上げるだけでは効果に疑問がある。

少年刑務所の処遇と少年院での教育との違いや効果も、あまり知られていない。

法改正の議論を始める前に、法務省はもっと社会に実態が理解されるよう、努力すべきだった。少年審判への検察官関与や裁判員制度の導入といった制度改革の後、更生の現場でどういう変化があったかも、検証が必要ではないか。

受刑者が被害者の声を聞く機会の拡充や保護観察の在り方など、運用面で見直すべき課題は他にも山積している。法改正を急がず、時間をかけて話し合うべきだ。