少年法改正 厳罰化に懸念が拭えない-新潟日報モア(2014年3月3日)

http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20140303098199.html

少年を更生させ、犯罪を抑止することにつながるのか。その効果に懸念が拭えない。

少年事件で言い渡す刑の厳罰化を柱とした改正少年法が、今国会で成立する見通しとなっている。

法案では、成人なら無期刑となるケースで、犯行時に18歳未満の少年に言い渡す有期刑(懲役・禁錮)の上限を現在の15年から20年に引き上げる。

判決時20歳未満の少年への刑期に幅を持たせる「不定期刑」の上限も、「短期」は最長5年から10年に、「長期」は最長10年から15年となる。

法改正は、加害者に厳しい処罰を求める遺族らの思いが反映された面が色濃い。

2005年に改正刑法が施行され、成人の有期刑の上限は一つの罪で20年、複数の罪で30年にまで引き上げられた。

少年との格差を疑問視する声が強まり、中でも09年に大阪府で起きた少年による殺人事件の裁判員裁判が大きな契機となった。

大阪地裁堺支部は11年、懲役5年以上10年以下の判決を言い渡し「10年の懲役刑でも十分ではない。適正な改正が望まれる」と異例の言及をしたのである。

法改正を議論していた法制審議会は昨年2月、法相に厳罰化を答申していた。

少年法は、これまでもたびたび厳罰化が図られてきた。

神戸市の連続児童殺傷事件などを受けた01年の改正では、刑罰の対象が「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げられた。07年には少年院送致の年齢下限が14歳から「おおむね12歳」となっていた。

今回の改正で厳罰化がさらに進むが、被害者遺族らは「これまでは刑が軽すぎただけで、刑罰の適正化にすぎない」と評価する。

遺族の悲しみや怒りといった思いを尊重することは大切だ。だが同時に「適切な処遇による立ち直り」を掲げる少年法の理念を忘れてはならないのではないか。

厳罰化で、刑期が終わるのが30代になり、社会に適応するのが難しく、再犯につながるという悪循環に陥りかねない。

社会復帰の機会を奪うことがないよう、処遇には再教育の観点が欠かせない。

行政機関や企業で更生支援の取り組みが進む中で、今回の法改正がそうした機運を失速させないかと危惧する声もある。

法務省は保護観察中の少年を臨時採用し、出所者を雇用した企業を庁舎改修工事などの入札で優遇する制度も導入している。

入札での優遇などは自治体にも広がっているほか、県内にも罪を犯した少年らを積極的に受け入れ続けている企業もある。

警察庁によると少年犯罪は減少しており、12年の刑法犯少年は前年比15・8%減の約6万5千件と戦後最少となった。

だが再犯者率は33・9%に達し、15年連続で増加した。

厳罰化だけが先行している面が否めないが、地域や家庭で「少年の健全な育成」を行っていくのはもちろん、犯罪被害者の支援など議論を広げて考えるべきだ。