少年法の改正 立ち直り進る視点で-信濃毎日新聞社(2014年2月12日)

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罪を犯した少年の厳罰化を柱とする少年法改正案が衆院に提出された。少年事件の被害者らの願いが反映された格好だ。

ただ、少年法は成長途中の過ちから立ち直らせることに主眼を置いている。そのためには、刑期を延ばすことが適当なのか。被害者感情だけでなく、更生のための教育や社会復帰を含めた議論を国会に求めたい。

現行の少年法は、成人なら無期刑となるケースで、犯行時に18歳未満であれば10〜15年の有期刑(懲役・禁錮)にできると規定。改正案は、この上限を20年に引き上げる。

また、判決時に20歳未満の少年に、短期と長期の刑期を示す「不定期刑」を言い渡す場合、現行では短期が5年、長期が10年を超えないと定めているが、短期を10年、長期を15年に引き上げる。

犯罪被害者の団体などから、成人に比べ少年事件の刑が軽すぎるとの声が高まっていた。法相の諮問機関の法制審議会が議論。昨年2月に法改正の要綱を答申した通りになった。

残忍な事件をきっかけに少年法は2000年代、犯罪抑止を狙い、厳罰化の改正が続いた。

01年に刑罰の対象年齢を16歳以上から14歳以上に引き下げ、故意に被害者を死亡させた16歳以上は原則、成人と同じ検察官送致(逆送)になった。07年には少年院送致できる年齢の下限を14歳から「おおむね12歳」に引き下げた。

確かに少年犯罪は減ってきている。警察庁のまとめだと、12年に刑法犯で摘発された少年は6万5千人余で9年連続して減少した。

一方で、再犯率は上昇している。同年は34%で、15年連続して増加した。法務省が行った少年院出所後の追跡調査では、背景が把握できた再犯者の約3割が暴力団に加入していた。罪を犯した少年の社会復帰が依然、厳しい状況にあることを示している。

自分の価値観が確立していない少年は長期間刑務所に入ると環境に適応し、出所後に社会に順応できない恐れがある。こうした専門家の見方も踏まえるべきだ。

貧困、育児放棄、虐待、いじめ、差別、思春期特有の感情…。少年犯罪には、自らは抗しがたい背景が横たわっている場合が多いといわれる。懲らしめるという発想だけではなく、立ち直るのにふさわしい処遇を国会でもよく考えてほしい。

また、こうした背景を集約、分析して、社会政策に生かしていく努力も欠かせない。