「ニュース女子と東京新聞は関係ない」 副主幹が反論 - (2017年2月6日)

http://www.asahi.com/articles/ASK265RQKK26UTIL05J.html
https://megalodon.jp/2017-0206-2155-22/www.asahi.com/articles/ASK265RQKK26UTIL05J.html

東京新聞中日新聞東京本社)の長谷川幸洋・論説副主幹は6日、自身が司会を務める東京メトロポリタンテレビジョン(MXテレビ)の番組に批判の声が上がっていることについて「論評いたしません」と述べた。コメンテーターを務めるニッポン放送のラジオ番組で語った。そのうえで、東京新聞が「反省」を表明したことに対し、「言論の自由に対する侵害だ」とし、「(副主幹を)辞めるわけにはいかない」とも語った。
問題になっているのは、沖縄の米軍基地反対運動を「テロリストみたい」などと伝えた1月2日放送の「ニュース女子」。取り上げられた人権団体や沖縄の基地反対の人たちから「差別的」「意図的な歪曲(わいきょく)がある」と批判の声が上がり、東京新聞中日新聞は2日付朝刊に深田実論説主幹の名前で「他メディアで起きたことではあっても責任と反省を深く感じています。とりわけ副主幹が出演していたことについては重く受け止め、対処します」との謝罪記事を掲載した。
長谷川氏は6日、番組については「コメントすることは差し控えたい」としたうえで「ニュース女子東京新聞は全く関係ない。なぜ深く反省するのか」と指摘し、「番組で取り上げた議論と東京新聞の報道姿勢は違うし、私自身も(同紙の主張と)違う。でも(主張の)違いを理由に私を処分するのは言論の自由に対する侵害」「意見が違うことで排除したら北朝鮮と一緒」などと批判した。
さらに会社から「内示のようなもの」があると明かし、「私の方から辞めるなんてことは、もう500%ありません」。「言いたいことはニュース女子で言います。これからも」と話した。
一方、東京新聞の深田論説主幹は取材に「紙面で書いたことにつきます」と話した。(坂本進)

19歳「辺野古の海守る」 小1から12年 基地反対の灯 - 東京新聞(2017年2月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020502000106.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0917-20/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020502000106.html

米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴い、名護市辺野古(へのこ)での新基地建設を問う住民投票があった一九九七年、名護に生まれた青年が両親と建設反対の声を上げている。琉球大学一年の渡具知武龍(とぐちたけりゅう)さん(19)。「目の前のきれいな海をなくすわけにはいかない」という思いで、小学一年から毎週土曜日、地元の米軍基地前に立ち続けている。 (村上一樹)

<「沖縄ヘイト」言説を問う>(2) 専修大文学部教授・山田健太さん(57) - 東京新聞(2017年2月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020302000129.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0917-39/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020302000129.html

言論の多様性という観点からは、いろいろな意見が番組内で紹介されるのはいいことだ。違う意見があるということを意識し、それをうまく乗り越えることで社会が強くなっていく。
だが「言論の自由」と「自由な言論」は違う。表現の自由があるからといって、何でも言っていいわけではない。どこまで表現の自由が許されるかは、市民社会の中で合意ができてくる。例えば、川崎のヘイトスピーチのデモが止まったのは、まさに市民力だと考えている。
沖縄の米軍基地反対運動を扱った東京MXテレビの番組「ニュース女子」は、ニュースバラエティーとはいえニュースという冠をつけており、基本は事実に基づいたものであるべきだ。事実と意見は峻別(しゅんべつ)するのがルールだが、番組ではどこまでが意見で何が事実か分からない。ジャーナリズムは真実を追求し、誠実に伝えるべきだが、今回はどちらも努力の跡が見られない。事実に基づくというジャーナリズムの原理原則に反しており、非常に問題がある。
沖縄返還前はもちろん、その後も、本土の沖縄への無関心は続いた。二〇〇〇年代後半の集団自決を巡る教科書検定問題以降は、沖縄に関する報道量が増えた。だが、沖縄県民の思いに寄り添う視点というより、政治的な意味で大きく扱われることが多く、今度は沖縄への偏見が表面化するようになった。
ここ数年は特に、本土と沖縄の分断だけではなく、沖縄県内の対立をあおるような報道が増えている。メディアが市民の間の分断を後押ししている感がぬぐえない。政府や政治家の言動を「そのまま」伝える報道が増えるほど、沖縄の新聞は偏向しているとか、市民運動は過激派が主導しているといった、沖縄に対する誤ったイメージが広がっていくように思う。これは結果として、沖縄の分断にメディアが消極的な加担をしていることにならないか。
表現の自由のためには、公権力が自らが気に入らない報道内容に、偏向報道誤報などと言い掛かりをつけるようなことを許してはならない。一方、いきすぎたメディアについては一刀両断に切るのではなく、市民社会の中で表現の自由の限界を議論し、メディア自身が気付いて直していくことが大切だ。

<やまだ・けんた> 1959年生まれ。専修大学文学部人文・ジャーナリズム学科教授。専門は言論法、ジャーナリズム論。『放送法と権力』『見張塔からずっと』など著書多数。

<「沖縄ヘイト」言説を問う>(3) 作家・活動家 雨宮処凛さん(42) - 東京新聞(2017年2月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020402000137.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0918-02/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020402000137.html

東京MXテレビの番組「ニュース女子」を見て、この国の「底が抜けた」ような気がした。若い女性におじさんが教える図式も気持ち悪かったが、沖縄ヘイト発言をする人たちにとっては、相手を面白おかしくおとしめて留飲を下げることの方が大事で、「真実がどこにあるのか」はどうでも良いように見えた。
生活保護バッシングや貧困バッシングには、言う方にも「自分だってつらいのに」という悲鳴のようなものを感じることもあるが、沖縄をバッシングする人はおそらく自分がつらいわけではない。単に「主張する人」が大嫌いで、ストレス解消のためにたたく。歴史的背景は関係なく「わがまま言ってるヤツがいる」「血祭りにしてしまえ」といった幼稚なものを感じる。
基地問題や米兵による事件など、沖縄には歴史的にずっと本土との不公平、不平等があった。低姿勢で「困ってるんです、助けてください」と言っているうちはみんな優しいが、主張しだした途端にたたかれる。東日本大震災後の一部被災者に対しても同じだった。
あの番組は「主張する人」が大嫌いな人たちによる、公共の電波を使った辛淑玉(シンスゴ)さんの公開処刑のように感じた。沖縄に対して複雑な思いや悪意がある人となら議論になるが、沖縄のことが憎い訳でも関心がある訳でもなく、単に声を上げる人が気に入らない人たちとは議論にならない。
一方、バッシングに乗ってしまう一般の人々にはどこか「嫉妬」もあると思う。「こっちは長時間労働で休みも金もなく死にそうなのに、休み取って沖縄行って正義を語れるなんて良い身分だね」というような。
誰かをやり込めたくなるのは、今自分がおとしめられて幸せでないから。格差、貧困が深刻化する中、「頑張っても報われない」など今は誰もが不条理の当事者でもある。しかし、そんな社会が長く続くと、みんな徐々に諦め、そのうち誰も怒らなくなる。そんな人々にとって「声を上げる人」は目障りなのだろう。
でも、そんな人たちにこそ言いたい。「おかしいと思ったら声を上げていいんだよ。賛同して一緒に戦ってくれる人はいる」と。
声が集まったら事態が動く、そんな健全な方に世の中が動いたらいいのに。非正規、貧困、不平等。不条理は自分に今も起きているはずだ。身の回りの犠牲のシステムと沖縄がつながる時が、いつか来ると思う。

<あまみや・かりん> 1975年生まれ。北海道出身。作家・活動家。2000年デビュー。「一億総貧困時代」など著書多数。貧困、雇用、生きづらさの問題などに取り組む。「反貧困ネットワーク世話人

日米防衛相会談 稲田氏、防衛力強化を明言 辺野古建設で一致 - 東京新聞(2017年2月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020402000251.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0918-27/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020402000251.html


稲田朋美防衛相は四日午前、防衛省マティス米国防長官と初の日米防衛相会談を行った。稲田氏は、日本が防衛力を強化していく考えを表明。両氏は米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題で、名護市辺野古(へのこ)への新基地建設を「唯一の解決策」として推進することで一致した。

会談で稲田氏は「地域の平和と安定のため、日本は積極的に役割を果たしていく」と指摘。「そのために防衛力を質も量も強化し、同盟での日本の役割を拡大していく」と述べた。マティス氏は会談後の共同記者会見で「安全保障関連法を土台に、今後はより多くのことを一緒にできるだろう」などと話した。

辺野古の新基地建設について、稲田氏は「一日も早い移設が必要」と指摘。両氏は、日米が協力していくことを申し合わせた。
南シナ海での中国の海洋進出を巡っては、稲田氏は、米国が艦船を派遣する「航行の自由」作戦を支持。沿岸国の海洋警備能力を向上させる支援などを通じ、関与を強めていくことで一致した。

マティス氏は、沖縄県尖閣諸島が日本の施政下にあり、米国の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第五条が適用されると明言。両氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発について、地域の安定への重大な脅威との認識で一致した。
一方、稲田氏によると、在日米軍駐留経費については、三日のマティス氏と安倍晋三首相との会談に続いて議論にならなかった。マティス氏は会見で「日本は(駐留経費の)コストや負担の共有に関してモデルとなってきた」と述べた。
稲田氏は日米韓三カ国の防衛協力を強化する意向を示し、マティス氏は「緊密な協調関係を稲田氏と築いていきたい」と話した。

翁長知事「沖縄県民に失礼」 - 東京新聞(2017年2月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020402000250.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0918-47/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020402000250.html

【ワシントン=後藤孝好】訪米中の沖縄県翁長雄志(おながたけし)知事は三日、首都ワシントンで記者会見し、安倍晋三首相とマティス米国防長官が米軍普天間(ふてんま)飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴う名護市辺野古(へのこ)への新基地建設の推進で一致したことについて「沖縄県民に対して大変失礼なやり方だ。絶対に阻止する決意は変わらない」と批判した。
翁長氏は安倍首相とマティス氏が三日の会談で「辺野古が唯一の解決策」との認識を共有したことに、「『辺野古が唯一の解決策』という考え方に固執すると、今後の日米安保体制に大きな禍根を残す」と強調。「私の決意はかえって強くなっている。沖縄県民は国を相手に闘っていると気付いたと思う」と述べた。
名護市の稲嶺進市長も記者会見に同席し、「『辺野古が唯一の解決策』という根拠は全く説明されず、沖縄県民は絶対に納得できない」と反発。「工事を強行すれば、日米両政府は世界から非難されることになる」と訴えた。
会見に先立ち、翁長氏は米国務省でヤング日本部長らと面会。辺野古への新基地建設を認めない方針に変わりがないことを伝え、計画の見直しを求めた。
国務省は面会後に声明を発表して「辺野古への移設は普天間飛行場の継続使用を回避するための唯一の解決策だ。米政府は建設にしっかり関与していく」と繰り返した。

「辺野古が唯一」日米防衛相一致 翁長氏、反対へ決意新た - 東京新聞(2017年2月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020502000124.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0919-08/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020502000124.html

【ワシントン=後藤孝好】訪米中の沖縄県翁長雄志(おながたけし)知事は三日、マティス米国防長官と安倍晋三首相ら日本側が米軍普天間(ふてんま)飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴う名護市辺野古(へのこ)への新基地建設を「唯一の解決策」と確認したことについて「私の決意はかえって強くなっている」と反対の思いを新たにした。今後もあらゆる権限を使って建設阻止を目指し、沖縄の民意を世界に発信し続ける方針だ。
知事として三度目となる首都ワシントン訪問は、トランプ米大統領の就任直後で、米国のアジア太平洋政策が固まっていない時期を選んだ。米下院議員十二人との面会や講演を通し、国土面積の0・6%にすぎない沖縄県に、在日米軍専用施設の七割が集中する過重負担の軽減や、新基地計画の見直しを訴えた。
その最中に、日米両政府が沖縄の民意を顧みず、辺野古新基地の建設推進で一致したことに、翁長氏は「沖縄県民に対して大変失礼なやり方」と反発。「県民の感情的な高まりが米軍全体への抗議に変わり、基地の安定運用に影響しかねない。日米安保体制に大きな禍根を残す」と指摘した。
安倍政権は六日に海上での本体工事に着手する方針で、翁長氏はあらゆる権限を使って建設を阻止すると主張。沖縄県が工事主体の防衛省沖縄防衛局に対し三月末で期限切れを迎える県の「岩礁破砕許可」の更新が必要であると通知するなど、本体工事の続行に抵抗する構えを見せる。
翁長氏は「沖縄県民の圧倒的多数が反対していることを、トランプ政権の関係者に粘り強く訴えていきたい」と今後も働き掛けを続ける考えだ。

軍学共同 防衛省以外も推進 技術開発へ「研究会」 内閣府、月内にも設置 - 東京新聞(2017年2月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020502000121.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0919-30/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020502000121.html

軍事に転用できる大学や民間研究機関などの技術(軍民両用技術)開発を推進するため、内閣府が今月中にも、有識者会合「安全保障と科学技術の研究会」を発足させることが、内閣府への取材で分かった。研究会は防衛省だけでなく、他省庁も巻き込んで軍民両用技術の開発を進める方策を探る予定で、軍学共同に反対する研究者らからは批判の声が高まっている。
政府関係者によると、研究会は、自民党国防族らの要望などを受け設置される。内閣府の政策統括官(科学技術・イノベーション担当)の下で議論し、検討結果は「総合科学技術・イノベーション会議」(議長・安倍晋三首相)に反映される。同会議は国の科学技術政策を担い、関連予算をどう配分するか決めている。
内閣府は、軍民両用技術の推進を唱える政策研究大学院大学の角南(すなみ)篤教授や、大手防衛企業幹部、日本学術会議大西隆会長などに参加を打診しているという。
研究会では、テロ対策技術や防衛技術の開発に重点が置かれる。軍事転用可能な大学などの研究に助成金を出す防衛省の「安全保障技術研究推進制度」にとどまらず、ほかの省庁が主導して大学や研究機関の研究を防衛技術に転用できる仕組みなどを検討する。
内閣府の担当者は「テロや防災など幅広い分野から議論し、防衛省だけでなく各省庁が安全保障に資する科学技術をいかに発展できるか考えたい」とする。議論を公開するかは未定。軍事研究を巡っては、国内の研究者を代表する機関「日本学術会議」が一九五〇、六七年の二度にわたり「軍事目的の研究をしない」とする声明を掲げているが、昨年から声明の見直しを含めた議論が続いている。

◆「おぞましい策謀」学術会議フォーラムで批判
軍民両用技術開発を推進するための研究会が内閣府に設置されることになった。大学や民間研究機関などの研究の軍事転用を巡っては、日本学術会議を中心にその在り方の議論が進められている。その結論も待たずに、国が軍学共同へと突き進む姿勢に、研究者の批判は高まっている。
日本学術会議の安全保障と学術に関する公開フォーラムが四日、東京都港区で開かれ、防衛省が大学や民間に助成する制度への批判が相次いだ。
東大大学院の須藤靖教授は「安全保障に過度に依存する基礎研究など信じ難い。制度に応募しないと合意すべきだ」と防衛省の制度を批判。臨床研究情報センターの福島雅典センター長は「政府の軍民両用はおぞましい策謀だ。科学者は人類の未来に重い責任があることを忘れてはならない」と主張した。
研究者の間に防衛省の制度を危険視する見方が広がる中、政府与党は逆の動きを強める。自民党のある防衛族議員は「中国は桁違いの金で核開発を進めている。のんきなことは言ってられない。大学や民間の軍事技術への取り込みは必須だ」と研究会の発足を促した理由を説明する。
フォーラムに参加した新潟大の赤井純治名誉教授は、「人類の福祉や平和に貢献できるような科学の在り方を無視した動きだ。国策の名の下に研究者が軍事研究に加担させられた歴史を繰り返そうとしている。あるべき学問とは何かという視点が完全に抜け落ちている。亡国の施策だ」と批判する。 (望月衣塑子)

23都道府県にヘイト具体例 抑止へ法務省 - 東京新聞(2017年2月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020502000108.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0919-52/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020502000108.html


法務省ヘイトスピーチ対策法の基本的な解釈をまとめ、同法で許されないとした「不当な差別的言動」の具体例を、要望があった二十三都道府県の約七十自治体に提示したことが、同省への取材で分かった。「祖国へ帰れ」などのキーワードを例示。ヘイトスピーチ抑止に取り組む自治体の担当者は「参考になる」と評価している。
対策法には差別的言動の明確な定義や禁止規定がなく、ヘイトスピーチが多発する川崎市京都府大阪市、神戸市、福岡県など十三自治体が判断基準や具体例を示すよう要望。憲法が保障する表現の自由を尊重する観点から、集会やデモでの公共施設使用を不許可とする判断は難しく、対応に苦慮する自治体のニーズに法務省が応えた形だ。
法務省人権擁護局は「ヘイトスピーチは新しい人権問題。具体例を参考に実情を踏まえた対策を取ってほしい」とし、十三自治体以外にも要望を受けて提供している。
具体例では「○○人は殺せ」といった脅迫的言動や、昆虫や動物に例える著しい侮辱、「町から出て行け」などの排除をあおる文言が当てはまるとした。さらに「○○人は日本を敵視している」などのように、差別的な主張の根拠を示す文言があったとしても、排斥の意図が明確であれば該当すると明示した。
ヘイトスピーチを事前に規制する施策の策定を目指す川崎市の担当者は「参考にしたい」と話す。
この問題に詳しい神原元(はじめ)弁護士は「法務省が示した具体例は、ヘイトスピーチの本質である『出て行け』といった排除をあおる言葉が差別だと明記している」と指摘。「対策法をより実践的に解釈している点で意義がある」と話している。
法務省が具体例を公表せず自治体の要望で提供する対応にとどめていることについて、対策法に詳しい弁護士は「法律の抜け道を研究されることを防ぐためではないか」と推測している。

◆「ヘイトスピーチのない社会を」川崎の市民団体 条例制定を訴え
在日コリアンらの排斥を掲げるヘイトスピーチに反対する川崎市を中心とする市民グループ「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」は四日、結成一周年記念集会を川崎区で開き、全国に先駆けた人種差別撤廃条例の制定を訴えた。二百七十人が参加した。
神奈川県日韓親善協会連合会会長の斎藤文夫元参院議員は「市民一人一人が声を上げ、川崎からヘイトスピーチのない多文化共生の社会を」と宣言。ジャーナリスト安田浩一さんは「ヘイトデモは差別の対象となる当事者だけでなく地域を、社会を壊す。私たちには人と社会と地域を守り抜く義務がある」と講演し、条例制定の必要性を訴えた。
ネットワークは昨年一月結成。昨年末に市人権施策推進協議会が福田紀彦市長へ提出した公共施設でのヘイトスピーチの事前規制を求める報告書を受け、市は今秋までに公共施設の利用制限に関するガイドラインを作成する。 (小形佳奈)

妊娠中の退職扱い無効 地裁立川支部「合意の立証が不十分」 - 東京新聞(2017年2月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020302000272.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0920-12/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020302000272.html

東京都多摩市の建築測量会社に勤務していた女性(31)が、妊娠中に勝手に退職扱いされたのは合意がなく不当だとして地位確認を求めた訴訟の判決で、東京地裁立川支部は請求を認めた。一月三十一日付。未払い賃金など約二百五十万円の支払いも命じた。
荒木精一裁判官は「自由な意思に基づいて退職したかについての会社側の立証が尽くされておらず、認められない」と述べた。
妊娠による降格が問題となった訴訟では最高裁が二〇一四年、降格を原則禁止し「女性が自由意思で同意しているか、業務上の必要性など特殊事情がなければ違法で無効だ」との判断を示した。
原告代理人の増田崇弁護士は今回の判決を「妊娠中の女性を退職に追い込んでも、合意があったと会社側が説明できなければ無効となる可能性がある。波及する範囲は広い」と評価した。
判決などによると、女性は一五年一月に妊娠が判明。相談した上司に「現場の業務は難しい」と、関連の派遣会社で働くよう指示されて登録をした。六月になって元の会社から「退職扱いになっている」と連絡を受けた。
荒木裁判官は判決理由で「妊娠中の退職の合意があったかについては、慎重な判断が必要」とした上で、原告の女性について「会社側から具体的な説明がされておらず、会社に残るか、退職して派遣登録するかを検討するための情報がなかった。自由な意思に基づく選択があったとは言い難い」として、合意があったとする会社側の主張を退けた。

「共謀罪」捜査に通信傍受も 無関係な「盗聴」拡大の恐れ - 東京新聞(2017年2月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020302000125.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0920-34/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020302000125.html

犯罪に合意することを処罰対象とする「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」を設ける組織犯罪処罰法改正案について、金田勝年法相は二日の衆院予算委員会で、捜査で電話やメールなどを盗聴できる通信傍受法を使う可能性を認めた。実行行為より前の「罪を犯しそうだ」という段階から傍受が行われ、犯罪と無関係の通信の盗聴が拡大する恐れがある。
テロ等準備罪を通信傍受の対象犯罪に加えるかどうかについて、金田氏は現時点では「予定していない」としながらも、「今後、捜査の実情を踏まえて検討すべき課題」と将来的には否定しなかった。質問した民進党の階(しな)猛氏は「一億総監視社会がもたらされる危険もある」と懸念を示した。
通信傍受法は、憲法が保障する通信の秘密を侵す危険が指摘され、捜査機関が利用できる対象犯罪が限定されている。テロ等準備罪の捜査は、犯罪組織による話し合いや合意、準備行為を実際の犯罪が行われる前に把握する必要があり、通信傍受が有効とされる。
関西学院大法科大学院の川崎英明教授(刑事訴訟法)は「盗聴は共謀罪捜査に最も効率的な手法。将来的には対象拡大を想定しているはずだ」とみる。
川崎教授は「テロ等準備罪に通信傍受が認められれば、例えば窃盗グループが窃盗をやりそうだという段階から傍受できる。犯罪と無関係の通信の盗聴がもっと広く行われるようになる」と指摘。傍受したことは本人に通知されるが、犯罪に関係ない通話相手には通知されないため、「捜査機関による盗聴が増え、知らないうちにプライバシー侵害が広がる」と危ぶむ。
沖縄の新基地建設反対運動に対する警察の捜査に詳しい金高望弁護士は「警察は運動のリーダーを逮捕した事件などで関係者のスマホを押収し、事件と関係ない無料通信アプリLINE(ライン)や、メールのやりとりも証拠として取っている。将来的には、通信傍受で得られる膨大な情報を基に共謀罪の適用を図ることも考えられる。テロ対策の名目で、あらゆる情報や自由が奪われる恐れがある」と話す。

<通信傍受法> 犯罪捜査のために裁判所が出す令状に基づき、電話や電子メールの傍受を認める法律。2000年の施行時には薬物、銃器、集団密航、組織的殺人の4類型に限定されていたが、昨年12月、殺人や放火、詐欺、窃盗、児童買春など対象犯罪を9類型に増やす改正法が施行された。00年から15年までに傍受した10万2342件のうち、82%が犯罪に関係のない通話だった。

入国禁止令、全米で差し止め命じる 大統領側は「合法」 - 東京新聞(2017年2月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201702/CK2017020402000249.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0920-56/www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201702/CK2017020402000249.html

米連邦高裁、入国禁止の復活認めず 政権上訴に判断 7カ国入国継続 - 東京新聞(2017年2月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201702/CK2017020602000109.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0921-14/www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201702/CK2017020602000109.html

(筆洗)カリフォルニア州の司法長官だったウォーレン氏 - 東京新聞(2017年2月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017020402000146.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0928-51/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017020402000146.html

「私はいつも、新聞を運動面から読み始める。運動面には人間が成し遂げたことが記録されているからだ。一面に載っているのは、人間がしでかした過ちばかりだ」と言ったのは、米国の連邦最高裁長官を務めたアール・ウォーレン氏であった。
憲法の番人」として人種差別を排し、人権を守るための画期的な判決を数多く残した彼は長く、「自らがしでかした過ち」を悔やんでいたという。
第二次大戦勃発時にカリフォルニア州の司法長官だったウォーレン氏は、日系人強制収容所への移送で大きな役割を担った。戦争への恐怖と人種的な敵意、治安への不安…。そういう感情に押し流され、罪のない人々を犯罪者のように扱ってしまったのだ。
今また、そんな風潮が広まっているのか。米国の日系人らの団体は、特定の国の出身者やイスラム教徒を排除しようとするトランプ政権のやり方が、かつて我々日系人に起きたことと同様のことを引き起こしつつあると警鐘を鳴らしている。
毎日毎日、米国発の不穏なニュースが、新聞の一面を飾る。それこそ「一面ではなく運動面から」と言いたくなるが、ウォーレン氏が存命なら、どうしたか。
彼は戦後、日系人団体の求めに応じて、人権侵害につながる法を改めるために、尽力したという。新聞の読み方はともかく、「人間がしでかした過ち」から目を背けはしなかったのだ。

(筆洗)命より大切な会社も学校も、どこにもありはしない - 東京新聞(2017年2月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017020302000136.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0921-33/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017020302000136.html

「死にたい」という言葉の裏には「生きたい」という思いが張り付いている。絶望と希望は表裏一体。であれば、目を背けがちな絶望について、もう少し考えてみてもいいのではないか。そんな思いで編まれたのが、名言集『絶望手帖』(青幻舎)だ。
たとえば、歌人枡野浩一さんが小説『ショートソング』の登場人物に詠ませた一首。<手荷物の重みを命綱にして通過電車を見送っている>
あるいは、心理学を学びながら自殺防止の活動をしている学生の指摘。<「今年も自殺者3万人」っていうけど、去年の3万人とは違う3万人っていうことの重さに、みんな本当に気づいてるのだろうか>
わが国の昨年の自殺者は警察庁の集計(速報値)によると、二万一千七百六十四人。かつて年間三万人を超え続けていたが、二〇一二年に二万人台となり、昨年は二十二年ぶりの「低水準」だったという。
しかし、それでも「去年の二万人とは違う二万人」が自ら命を絶ち続けている現状がある。仕事で追い詰められ、学校でいじめに遭い、「死にたい」と裏に張り付いている「生きたい」が、はがれ落ちてしまっているのだ。
忘れてはならぬ言葉がある。娘まつりさんを過労自殺で失った高橋幸美(ゆきみ)さんが、絶望の中から絞り出したひと言、「命より大切な仕事はない」。命より大切な会社も学校も、どこにもありはしないのだ。

絶望手帖

絶望手帖

(私説・論説室から)あの時、知っていたら - 東京新聞(2017年2月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017020602000123.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0921-55/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017020602000123.html

成人式を迎えたばかりの彼女は、二年前に退所した東京都内の児童養護施設に月に一度は顔を出す。「後輩たちの進路の選択肢を少しでも増やしたい」との思いから、支援団体の情報などを伝えるためだ。
母親の再婚相手による虐待が激しくなったのは、六歳下の弟が生まれてからだ。ささいなことで殴る蹴る。中三の冬、携帯電話を投げ付けられ、額に大けがをした。翌朝、絆創膏(ばんそうこう)を貼っただけで登校する。学校の先生が見つけ児童相談所に通報し、施設に入った。
高校卒業後はアウトドア関連の専門学校に行きたいと思っていたが、職員から「一人暮らしをしながらアルバイトをして、勉強するのは大変だ」と反対された。就職した映像編集会社はひどいブラック企業だった。連日、会社で寝泊まりしなければならないほどの長時間労働に残業代は支払われない。「死にたい」とまで思うようになり、一年で辞めた。
今はアルバイトを掛け持ちしながら、支援団体の集まりに参加する。そこで奨学金や給付金制度があることを知った。「高校生の時に知っていれば、進学できたかもしれない」と悔やむ。施設職員も日々の仕事に追われ、知識がなかったのだろうと振り返る。
だから、彼女は施設にいる子どもたちのための相談・支援先を一覧にしたガイドブック作りに取り組んでいる。「道はいっぱいあることを知ってほしい」からだ。(上坂修子)

(余録)デンマークの童話作家、アンデルセンの「影法師」は… - 毎日新聞(2017年2月6日)

http://mainichi.jp/articles/20170206/ddm/001/070/151000c
http://megalodon.jp/2017-0206-0922-28/mainichi.jp/articles/20170206/ddm/001/070/151000c

デンマーク童話作家アンデルセンの「影法師」は気味の悪い物語だ。若い学者が自分の影をなくしてしまう。影はやがて元の主人である学者より地位や財力を得た人間として戻ってくる。主人と影の立場は逆転し、学者は命を奪われる。影とうまく付き合わないと身を滅ぼす。
影とは人間の心に潜む闇を映し出したものかもしれない。それは社会の中にもあるだろう。昨秋、アンデルセン文学賞を受賞した村上春樹さんはこの物語を引用してスピーチした。「全ての社会と国家にも影があり、向き合わなければならない。われわれは影から目を背けがちで、排除しようとさえする」
トランプ米大統領の場合、自身の影を見ようともしない。全て自分が正しい。排外主義的な政策に批判が集まっても意に介さない。トランプ氏の発言は中東情勢も不安定化させかねない。イスラエルパレスチナが帰属を争うエルサレムへの米大使館移転構想もその一つだ。
村上さんは8年前、そのエルサレム文学賞を受賞し、現地で講演した。体制を「壁」、個人を「卵」に例えて「私は常に卵の側に立つ」と述べ、反響を呼んだ。
イスラエル軍によるパレスチナ自治区への攻撃で1000人以上が死亡した直後のことだった。受賞すべきか自分に問いかけた末、あえてイスラエルの「影」に触れた。
村上さんはアンデルセン賞のスピーチでこうも述べている。「影と向き合わなければ、いつか影はもっと強大になって戻ってくるだろう」。安倍晋三首相は今週末、トランプ氏との初の首脳会談に臨む。大きくなる米国の影に言及するのか、あるいは目を背けるのか。