(筆洗)カリフォルニア州の司法長官だったウォーレン氏 - 東京新聞(2017年2月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017020402000146.html
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「私はいつも、新聞を運動面から読み始める。運動面には人間が成し遂げたことが記録されているからだ。一面に載っているのは、人間がしでかした過ちばかりだ」と言ったのは、米国の連邦最高裁長官を務めたアール・ウォーレン氏であった。
憲法の番人」として人種差別を排し、人権を守るための画期的な判決を数多く残した彼は長く、「自らがしでかした過ち」を悔やんでいたという。
第二次大戦勃発時にカリフォルニア州の司法長官だったウォーレン氏は、日系人強制収容所への移送で大きな役割を担った。戦争への恐怖と人種的な敵意、治安への不安…。そういう感情に押し流され、罪のない人々を犯罪者のように扱ってしまったのだ。
今また、そんな風潮が広まっているのか。米国の日系人らの団体は、特定の国の出身者やイスラム教徒を排除しようとするトランプ政権のやり方が、かつて我々日系人に起きたことと同様のことを引き起こしつつあると警鐘を鳴らしている。
毎日毎日、米国発の不穏なニュースが、新聞の一面を飾る。それこそ「一面ではなく運動面から」と言いたくなるが、ウォーレン氏が存命なら、どうしたか。
彼は戦後、日系人団体の求めに応じて、人権侵害につながる法を改めるために、尽力したという。新聞の読み方はともかく、「人間がしでかした過ち」から目を背けはしなかったのだ。