23都道府県にヘイト具体例 抑止へ法務省 - 東京新聞(2017年2月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020502000108.html
http://megalodon.jp/2017-0206-0919-52/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020502000108.html


法務省ヘイトスピーチ対策法の基本的な解釈をまとめ、同法で許されないとした「不当な差別的言動」の具体例を、要望があった二十三都道府県の約七十自治体に提示したことが、同省への取材で分かった。「祖国へ帰れ」などのキーワードを例示。ヘイトスピーチ抑止に取り組む自治体の担当者は「参考になる」と評価している。
対策法には差別的言動の明確な定義や禁止規定がなく、ヘイトスピーチが多発する川崎市京都府大阪市、神戸市、福岡県など十三自治体が判断基準や具体例を示すよう要望。憲法が保障する表現の自由を尊重する観点から、集会やデモでの公共施設使用を不許可とする判断は難しく、対応に苦慮する自治体のニーズに法務省が応えた形だ。
法務省人権擁護局は「ヘイトスピーチは新しい人権問題。具体例を参考に実情を踏まえた対策を取ってほしい」とし、十三自治体以外にも要望を受けて提供している。
具体例では「○○人は殺せ」といった脅迫的言動や、昆虫や動物に例える著しい侮辱、「町から出て行け」などの排除をあおる文言が当てはまるとした。さらに「○○人は日本を敵視している」などのように、差別的な主張の根拠を示す文言があったとしても、排斥の意図が明確であれば該当すると明示した。
ヘイトスピーチを事前に規制する施策の策定を目指す川崎市の担当者は「参考にしたい」と話す。
この問題に詳しい神原元(はじめ)弁護士は「法務省が示した具体例は、ヘイトスピーチの本質である『出て行け』といった排除をあおる言葉が差別だと明記している」と指摘。「対策法をより実践的に解釈している点で意義がある」と話している。
法務省が具体例を公表せず自治体の要望で提供する対応にとどめていることについて、対策法に詳しい弁護士は「法律の抜け道を研究されることを防ぐためではないか」と推測している。

◆「ヘイトスピーチのない社会を」川崎の市民団体 条例制定を訴え
在日コリアンらの排斥を掲げるヘイトスピーチに反対する川崎市を中心とする市民グループ「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」は四日、結成一周年記念集会を川崎区で開き、全国に先駆けた人種差別撤廃条例の制定を訴えた。二百七十人が参加した。
神奈川県日韓親善協会連合会会長の斎藤文夫元参院議員は「市民一人一人が声を上げ、川崎からヘイトスピーチのない多文化共生の社会を」と宣言。ジャーナリスト安田浩一さんは「ヘイトデモは差別の対象となる当事者だけでなく地域を、社会を壊す。私たちには人と社会と地域を守り抜く義務がある」と講演し、条例制定の必要性を訴えた。
ネットワークは昨年一月結成。昨年末に市人権施策推進協議会が福田紀彦市長へ提出した公共施設でのヘイトスピーチの事前規制を求める報告書を受け、市は今秋までに公共施設の利用制限に関するガイドラインを作成する。 (小形佳奈)