【政界地獄耳】日本では「極右」と説明する仏政党の内実を理解し学んでいこう - 日刊スポーツ(2024年7月3日)

https://www.nikkansports.com/m/general/column/jigokumimi/news/202407030000038_m.html?mode=all

★6月の欧州議会選挙で仏、独、伊などで右派勢力が台頭。仏では国民連合(RN)が勝利し、マクロン大統領は下院を解散した。国民議会選挙(下院、定数577)で第1回投票が6月30日行われ、マリーヌ・ルペン率いる極右政党国民連合が第1党になる勢いだ。国民議会選は小選挙区制で、第1回投票で有効投票の過半数を取る候補者がいない選挙区では、有権者の12・5%以上の票を得た候補者による決選投票が行われる。その2回目が今月7日にある。それで第1党になる勢いという報じ方になる。
★日本の報道ではNHKを始め、多くのメディアが「マリーヌ・ルペン率いる極右政党国民連合」と説明するが、同党の現在の党首はジョルダン・バルデラ。同党は1972年にマリーヌの父、ジャン=マリー・ルペン国民戦線を発足。反ユダヤ主義、排外主義、人種主義の思想を掲げたので極右政党と言われた。だが18年、マリーヌが穏健化路線を進め、党名も国民連合に変更。それどころか名誉職にとどまっていた父マリー・ルペンをも解任した。現在の国民連合の政策は<1>治安の改善と犯罪対策<2>移民制限と厳格な規制<3>経済政策と購買力の維持<4>欧州連合との対立などを掲げている。反移民なものの排除まではしていない。EUからの離脱などを掲げ国家主義的で保守主義ではあるが、欧州議会で主導権を取れば、その必要もなくなる。
★極右政党と表記されるのは左派、極左、右派、極右政党が存在するからだ。マクロンは中道与党連合に位置する。政治変革を掲げ既成の権力やエリートを批判し、国民の賛同を得る、また柔軟性をもって多くの支持者を集めるポピュリズム政党という表現が仏には多いが定義はあいまいだ。つまり仏の価値だけを日本に当てはめようとすると政党の定義も価値も意味も違うのでもう少し丁寧な解説がメディアには望まれるが、日本の硬直化した右派、左派の定義や政党の成熟性を高めるためには学ぶべきことは多い。(K)※敬称略