【政界地獄耳】川勝氏辞職で揺れる静岡のリニア政策はどこへ向かう? - 日刊スポーツ(2024年4月16日)

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静岡県知事・川勝平太の辞職に伴う知事選(5月9日告示、同26日投開票)で12日、元総務官僚で静岡県副知事も務めた大村慎一は会見を開き、出馬表明した。リニア中央新幹線静岡工区未着工問題については「改めて確認、点検し、流域市町、関係する皆さまのご意見を聞いていきたい」とはっきりしたことは言わなかった。一方、15日には前浜松市長の鈴木康友も会見を開き、出馬を正式に表明した。リニアについては「環境との両立を図りながら推進する」と着工推進を明確にした。これで大村対鈴木の構図が出来上がったように見える。

★県は大井川の水量減少や自然環境への影響を懸念して着工を認めてこなかったが、JR東海は東京や長野などほかの地域での問題や進捗(しんちょく)の遅れを静岡県が反対しているからと収斂(しゅうれん)させ、開通の遅れは静岡のせいとの認識を示してきた。だが反対派の急先鋒(せんぽう)である川勝の辞職で、すべてを静岡に押し付けるわけにはいかなくなる。2人の候補者、大村は国土強靱(きょうじん)化を強く推し進め運輸相も歴任した自民党元幹事長・二階俊博に近く、鈴木は静岡財界のドンともいえるスズキ相談役・鈴木修の強い推しがあるといわれる。どちらが勝っても、いずれも国土交通省JR東海とも深い関わりがある後見人といえる。

★当初は立憲民主党渡辺周が後継に取りざたされた。川勝からも打診を受け、本人も意欲を見せたが、12日深夜に党代表・泉健太が「静岡県知事選挙への出馬意欲は承知しているが、夏にも想定される解散総選挙で再びの政権交代を実現するため党の総意として国政にとどまって頂きたい」と懇願され断念した、とフェイスブックにつづった。だが連合は当初から自動車総連を軸に鈴木支援が固まっており「川勝リニア政策の継承者」と受け止められていた渡辺の出馬を連合の意を受けた泉がつぶしたと言える。県民の不安は、政治によって後回しにされたといえる。(K)※敬称略