(政界地獄耳) リニアの行方は不透明 国交省鉄道局は何を急ぐのか - 日刊スポーツ(2020年4月29日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202004290000047.html

★27日夜、リニア中央新幹線の静岡工区早期着工を目指す国土交通省が設置した有識者会議が、オンライン会議で始まった。河川工学が専門の中央大学研究開発機構の福岡捷二教授を座長に計8人の委員で構成。27年に開通を目指すJR東海だが、有識者会議の人選でもひともめあった。国交省の人選で静岡工区を受注する大成建設から報酬を得ている人物などが入っていて静岡県とすれば公正を欠くというもの。県が有識者を公募して国交省に提示し人選を再考するなど混乱が続いた。

★この会議の目的を国交省技術審議官・江口秀二は「『トンネル湧水の全量の戻し方』と『地下水への影響』を重点的に議論していく」としてきたが、大井川の水資源の減水などに不安がある県が申し入れている議論項目は生態系の問題など水資源以外もあり47項目ある。この会議に県はオブザーバー参加しかできない。会議冒頭、国交省鉄道局長・水嶋智は「リニアの早期実現と環境負荷の軽減を両立させる。国民の関心事項なので、いたずらに時間をかけるわけにはいかない」とあいさつ。

★水嶋から見れば静岡のわがままで遅れていると言いたげだが、実際はコロナ禍の影響で東京、神奈川、岐阜、静岡、長野の工事は中断。「いたずらに時間がかかっている」のはコロナのせいに他ならない。それよりもこの事態で国交省鉄道局はJR東海東海道新幹線の利用者8割減の現実をどうとらえるのか。固定費のかかる鉄道事業は稼働率で商売が成立。稼働率が上がらなければもうけは生まれず、列車を運行しなくても固定費はかかる。既にリニアの工期どころか、工事費用は賄えるのか。いつまで工事が中断するかもわからず、いたずらに時間をかけるわけにはいかないのではないか。リニアの行方は極めて不透明な中、鉄道局は何を急いでいるのか。(K)※敬称略