(政界地獄耳) リニア中央新幹線有識者会議 国交省お粗末の限り - 日刊スポーツ(2021年4月9日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202104090000087.html

★その会議は開始されるところから、国交省鉄道局の都合が優先される異様な始まりだった。20年4月から始まったリニア中央新幹線静岡工区の水資源の影響についての有識者会議は委員の人選などでも同省とJR東海静岡県との間で激しい駆け引きが続いていた。本来はJR東海と県の対立の仲介に入ったはずの同省はその役割を果たしていない。まさに国交省鉄道局の暴走といえる。県と同省は事前の協議では「会議の全面公開」で合意していた。ところが同省は昨年5月13日、専門家会議の公開に関し「インターネットによる会議映像の全国配信は忌憚(きたん)のない自由な発言を阻害し、委員への非難や中傷の恐れがあり応じられない」「報道関係者の傍聴や議事録の開示で透明性は確保され、全面公開の要件を満たす」との方針を一方的に発表。

★これでは最初から国交省JR東海と示し合わせていたと疑われても仕方がない。今回、問題となったのは第9回会議(2月28日)の中間報告のまとめ方に関するやりとり。議事録が発言通り作成されず、事後に追加、削除した箇所があることが分かった。これでは同省が掲げた方針はいずれも破綻したといえる。また、当初から会議後に出される専門家会議座長・福岡捷二(中央大研究開発機構教授)の座長コメントなるものが、会議の内容を反映していないとメディアや県から強い抗議が続いていた。ところが、昨年8月25日の第5回会議では「座長コメント」なる紙を配布し、座長の代弁を国交省大臣官房技術審議官・江口秀二が務めた。

★我慢を重ねていた静岡県知事・川勝平太は先月23日、「JR東海を指導する会議が(同社の)資料を追認し中立性に欠ける」と批判した。座長コメントも会議外の非公開な場でまとめられているとし、座長の交代を求めた。リニア擁護派も手続きを乱暴にして進めた鉄道局とJR東海連合のやり方を肯定できるのか。お粗末の限りだ。(K)※敬称略