<ぎろんの森>「安倍政治」清算の苦しみ - 東京新聞(2024年3月30日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/318234?rct=discussion

昨今のニュースに接して、共通するあることが頭をよぎります。「『安倍政治』清算の苦しみ」です。

例えば日銀の政策金利引き上げです。2012年に発足した安倍晋三政権の「アベノミクス3本の矢」は大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略からなり、低金利ゼロ金利政策は大きな柱でした。

しかし、日米の金利差から過度に円安となり、輸入物資高騰から国内で物価高を起こしました。一方、積極的な財政政策で国債発行残高は増え続け、国債の利払い膨張の恐れから、金利引き上げには慎重にならざるを得ないという状況に陥っていました。

東京新聞20日社説で「13年からの大規模な金融緩和策は大企業に好決算をもたらし、株価上昇で投資家も潤う一方、賃金低迷と物価高で多くの人々は生活の質の低下を強いられた」と指摘、「今回の利上げを、暮らしをより豊かにする金融政策の実現に向けた起点とすべきである」と訴えました。

そうした中で起きたのが、小林製薬が製造販売した紅こうじ成分入りのサプリメントを摂取した人が死亡したり入院したりするなど健康被害の拡大です。被害の拡大防止と原因究明を最優先すべきは当然ですが、引っかかるのはサプリが機能性表示食品として製造販売されたことです。

特定保健用食品と異なり、安全性や機能性に関する国の審査がなく、届け出だけで済むこの制度は安倍内閣の成長戦略として導入されました。

すべての機能性表示食品に問題があるわけではないにせよ、死者を出しては制度への信頼性は揺らぎます。本紙は29日社説で「安倍政権下で食に関しても行われた成長戦略としての規制緩和が妥当だったのか、根本から問い直すべきである」と指摘しました。

この二つのことは一見無関係ですが、安倍政権の弊害が顕在化したという点は共通です。これまでの政権の負の遺産清算するのは決して容易ではありませんが、私たちの暮らしをより良くするには通らねばならない関門です。

岸田文雄首相は安倍政権下で進んだ軍事優先の安全保障政策も転換すべきですが、首相に問題意識がなく、政権も体力を失いつつあり望み薄。政治を変えるには政権を代えるしかありません。 (と)