(ぎろんの森) 岸田新総裁へのモヤモヤ - 東京新聞(2021年10月2日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/134422

菅義偉首相の事実上の退陣表明から一カ月近く。自民党総裁選がようやく終わり、岸田文雄氏が新総裁に選出されました。週明けに首相に指名され、衆院選が来月行われる見通しです。
一回目の投票では河野太郎氏が党員・党友票を最も多く得たにもかかわらず、決選投票で多数の国会議員に支持された岸田氏が当選しました。
一般の有権者により近い党員らの思いは今回も届かなかった形になり、九月三十日付社説では「結局『永田町の論理』か」と指摘しました。
岸田氏の新総裁選出には、読者の間で賛否両論があるようです。「河野太郎氏よりも実力があり、政策判断力が高いかもしれない」「なぜ個性のない地味な人が総裁になれたのか」という具合です。
一国の首相になる人物に対して毀誉褒貶(きよほうへん)があるのは当然ですが、私たちにとって大事なことは、九年近くにわたる「安倍・菅政治」をどう総括し、何を引き継ぎ、何を引き継がないのか、です。
岸田氏は「新自由主義からの転換」を掲げ、「成長と分配の好循環」を目指すとしていますが、金融緩和、財政出動、成長戦略を「三本の矢」とするアベノミクスを「大きな功績」と位置付けます。
国民の暮らしに寄り添った政策への大胆な転換は難しいように感じます。加えて、政治への信頼回復です。
特に、安倍政権下で起きた森友・加計学園や「桜を見る会」を巡る問題は、政治や行政に対する信頼を大きく傷つけ、今もすべてが解明されたとは言えません。
首相交代は調べ直す好機ですが、岸田氏にその気はないようです。「モリカケ桜などの疑惑に岸田氏が『聞く力』を発揮するとは思えず、モヤモヤ感が拭えない」との読者の意見に同感です。
東京新聞には読者から「数々の疑惑を粘り強く追及する姿勢を強く支持する」「新政権が発足してもスタンスを変えることなくどんどん追及してほしい」との励ましも届きます。衆院選に向けて身の引き締まる思いです。 (と)