<ぎろんの森>防衛政策が異なるのなら - 東京新聞(2023年9月30日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/280727

自民党副総裁の麻生太郎元首相が講演で、国家安全保障戦略改定に向けた議論の過程を紹介する中で、敵基地攻撃能力の保有について「公明党専守防衛に反するという理由で反対」したと明かし、山口那津男代表ら幹部3人の名前を呼び捨てにして「がん」に例えました。聞き捨てならない発言です。

東京新聞は29日の社説「公明党は『がん』 憲法蔑(ないがし)ろにする暴言だ」で「公明党に限らず、憲法を守り、専守防衛の堅持を求める政治勢力全体への挑戦だ。防衛という基本政策の根本が異なるなら、連立政権を解消するのが筋ではないか」と批判しました。

社説に対し、公明党支持者から「連立政権でも平和や憲法への思いでは譲れないことがある。平和への思いを強く感じる社説が心に刻まれた」との意見が届きました。

岸田文雄首相は29日、山口氏との会談で、麻生氏の発言を念頭に、与党幹部の発言は「慎重さと丁寧さに心がけたい」と述べたそうですが、麻生氏の発言は単なる暴言にとどまらず、防衛という基本政策が自公両党間で異なるという現実に、あらためて気付かせてくれました。

公明党安倍晋三首相(当時)が進めた集団的自衛権の行使の容認を最終的に受け入れましたが、当初は反対していました。岸田首相の敵基地攻撃能力の保有も同様の経過をたどりました。

「平和の党」を自任する公明党の防衛政策が自民党とは異なるからこそ、当初は反対し、抵抗したのでしょう。それが麻生氏のがん発言につながったと言えます。

防衛という基本政策が異なるなら、連立を解消するのは当然です。岸田首相は、立憲民主、共産両党の選挙協力ですら「理念なき野合だ」と批判していましたので、自ら範を示してはどうでしょう。

首相は20日召集予定の臨時国会中に衆院解散・総選挙に踏み切るのではとの見方も浮上しています。与党が勝てそうな時期だからという恣意(しい)的な解散は認められませんが、連立を解消して国民の審判を仰ぐのなら、解散の大義に十分なり得ます。 (と)