<ぎろんの森>「安倍政治」を問い続ける - 東京新聞(2023年7月15日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/263305

安倍晋三元首相が参院選の遊説中に銃撃され、亡くなってから八日で一年がたちました。東京新聞をはじめ新聞各紙は当日朝刊の社説で、銃撃事件の意味を問いかけ、自らの立場を明らかにしました。

本紙は社説「安倍氏銃撃1年 暴力ではなく票の力で」で「まず確認すべきは、暴力は許さないということだ」「暴力を許容すれば暴力の連鎖を生む。暴力ではなく言論で問題の解決を目指す民主主義の理念を重ねて確認しておかねばなるまい」と指摘し、主権者が投票で決する民主主義の原則を確認しました。

同時に「事件を機にそれまで封印されてきた問題や課題も明らかになった」として、高額献金など旧統一教会による被害者の救済に加え、教団がこれまでの国の政策に影響を与えたか否か、自民党議員らとの関係を調査する必要性も訴えました。

社説ではこれまでも、安倍政権時代に集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法の成立を強行したことや、大規模金融緩和を柱とする経済政策「アベノミクス」が格差拡大につながったこと、国民を分断して自らの支持につなげる政治手法などを厳しく批判してきました。

安倍氏を悼みつつも、その政治的業績への評価は別の問題と考えます。

「安倍政治」を批判してきた本紙の筆鋒(ひっぽう)(筆の勢い)が緩むことはありません。なぜなら国会を軽視し、国民の間での幅広い議論なく安全保障や原発を巡る政策転換に踏み切った岸田氏の政策・政治手法の起点が安倍政治にあるからです。安倍政治の問題は決して過去ではなく、現在進行形の問題でもあるのです。

読者からも「政府がいまだにアベノミクスの功罪を検証していないことが問題です」との指摘が届いています。

岸田政治の起点として、そして今も影響を与え続けている安倍政治の妥当性を、正しいしつこさで問い続けねば、と考えています。(と)