【政界地獄耳】関西万博延期の駆け引き 経産省のメンツ保ち維新の弱体化狙い - 日刊スポーツ(2024年2月1日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202402010000125.html

★1月27日、経済安保相・高市早苗長野市内の講演で、能登半島地震の復興を優先するため、来年開催予定だが予算が膨らみ続け、工期も遅れている大阪・関西万博の開催を延期するよう、首相・岸田文雄に進言したと発言。また高市は30日付で超党派の「万博を成功させる議員連盟」に退会届を提出。総裁選挙を視野に猛アピールに出た。

★29日の会見で官房長官林芳正は「(開催を)遅らせる必要があるとは認識していない」と火消しに走り、30日午前の閣議後会見で経産相斎藤健も「現時点で万博関連の資材調達によって(能登半島地震の)復興に具体的に支障が生じるとの情報に接していない」とし、「万博の開会を遅らせる必要があるとは認識していない」と防戦一方だ。官邸では昨年11月、官房長官松野博一(当時)が首相に延期または中止をしたらどうかと進言。首相は言下に「万博は予定通りやる」と答えたとされる。「経産省が省を挙げて万博を推進、企業にカネも出させている。簡単に中止とか延期とか言われても困る」と首相を説得し続けたからだ。

★だが能登半島地震の復興を理由にするのは千載一遇のチャンスとばかり、官邸は水面下の根回しを始めていたところに、高市プランのように出されると否定せざるを得ない。案の定、高市発言に日本維新の会代表・馬場伸幸は早速「高市大臣の『万博を延期すべきである』ということが翻らないということになれば、政府は万博を予定通り推進していくということに変わりがないと表明されているので(高市が)政治家の信念で言い続けるのであれば、辞職をされるべきだ」と閣内不一致で攻め始めた。首相も高市の所管である機密情報に触れる権限を付与する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)制度」の今国会の提出で機嫌を取り「最終的には総理の判断に従う」という言質を取った。首相と高市の共通認識には万博延期で経産省のメンツを保ち、維新の弱体化の狙いがあるだろう。さまざまな駆け引きが動き始めた。(K)※敬称略