【政界地獄耳】国民から疑問視される岸田の政治的判断2つ - 日刊スポーツ(2024年1月13日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202401130000092.html

★首相・岸田文雄の政治力なのか、それとも政治センスなのか。官邸の側近たちの判断力なのか。ふたつの政治的判断が国民から疑問視されている。1つは11日に党が初会合を開いた「政治刷新本部」。岸田以下、派閥の領袖(りょうしゅう)がそろい、派閥の在り方を議論すること自体が政権政党の限界だ。国民からの見え方と結社の自由のバランスが極めて悪い。裏金事件の温床は派閥や都道府県で開いていたパーティーだ。前首相・菅義偉の言うように「派閥解消」がスタートラインになるとしても、自民党になぜこれほどのカネが必要か。今まではかかっていたかもしれないが、もうそういう政治をやめるという議論が、この刷新本部の誰からも感じないところが既に失敗ではないのか。党内議論がずれていることに理解がないだけで国民は離反する。

★同日、政府は能登半島地震を「激甚災害」と「特定非常災害」に指定した。激甚災害指定により被災者や、地元自治体への経済的支援が広がる。特定非常災害は被災者の財産や今後の生活への行政的支援が軸で、さまざまな法律上のルールに執行猶予などの緩和が適用される。野党はこの決定が遅いというが、加えて自衛隊の逐次投入が被災地支援を遅らせているのではないかという声も野党中心にある。立憲民主党の母体は民主党東日本大震災時の政権与党だ。ただ当時の自民党総裁谷垣禎一は政府に協力支援を求めていたことに比べると、今の野党は批判中心だ。

自衛隊の支援規模がままならないのは石川県の金沢、福井県鯖江富山県の富山の、各駐屯地の人員規模が少ないこと。能登半島への陸路は南側からの進入路しかなく、道路のひび割れや土砂崩れ、山と海に囲まれた地形、発災後に降った雪が大規模投入を阻んだといえる。同じように医療支援の遅れも否めない。だが9日の防衛相・木原稔は会見で「その時点で必要となる最も効果的な活動を見極めつつ、人員を振り向けることとしている」と、あたかも作戦かの説明をした。国民を安心させる説明ができない、ここだけは人災だ。(K)※敬称略