【政界地獄耳】もはや当事者能力がないのでは…実態がない岸田政治の1年 - 日刊スポーツ(2023年12月30日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202312300000159.html

★2023年の国内政治を振り返れば、前半は首相・岸田文雄の「異次元の少子化対策」「新しい資本主義」「信頼と共感の政治」などキャッチーな言葉が躍ったが、具体策に結び付くものはなく、だんだんと「言葉遊び」の様相を呈してきた。岸田政治はつかみどころがないといわれるが、実態がないが実像ではないか。社会では格差が広がっている極めてしっかりした実像があるものの、政治では言葉が躍ってばかりでは国民からの支持は得られない。「アベノミクスを終わらせる」とか「安倍政治の失敗から自民党を本来の形に戻す」と言いたいのだろうが、そう思わせずに修正していきたいという思いが空回りした結果ではないか。

★その支持率に陰りが見えてきたのは国会が終わる6月ごろからだが、それまでは5月の広島サミット開催まで首相自身に高揚感があったのだろう。ウクライナのゼレンスキー大統領も電撃来日した。地元広島でホストとして議長として振る舞った首相は政治的に絶頂期と言えたが、そのあとは総選挙に踏み切りそうで踏み切らない解散権をもてあそぶ思わせぶりが、政治の信頼を損ねていき、今日の支持率低下の低空飛行につながっている。

★物価高、マイナンバーカードへの不安、東京五輪汚職五輪になったという反省もないまま、大阪万博の野放図な開催費用の高騰に誰も歯止めをかけず、その一方、増税をちらつかせた首相はもはや当事者能力を持たなかったが、そもそも政治の中心にいる当事者であるという自覚に欠けるリーダーの一言一言が国民を逆なでしたのではないか。ウクライナとロシアの戦争に加え、イスラエルガザ地区への攻撃を始め、世界は2つの戦争を抱え込んでいる。日本はさして強い意志があるわけではないが、ウクライナイスラエル支援をして、停戦、休戦の努力も足りない。今は東京地検特捜部の捜査で首相は「人気薄」を安倍派に押し付け、しのいでいるが、政治改革でも後ろ向きだ。こう振り返ると、随分と寂しい政治の1年だ。(K)※敬称略