【政界地獄耳】政治家以前の順法精神のかけらもない 政治と政党の劣化はほかの何よりも著しい - 日刊スポーツ(2023年11月14日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202311140000055.html

★「その問題は司司(つかさつかさ)に任せます」と言った昭和最後の首相・竹下登だが、官僚への気遣いの言葉とされているだけでなく、それぞれの所管の大臣に任せるという意味でも使われた。何しろ中曽根政権の後に生まれた昭和最後の竹下政権は幹事長に安倍晋太郎、副総理・蔵相に宮沢喜一と総主流派体制、気配り政治だった。既に自民党にそんな世界はなく、美徳とも思われていないだろう。山陰中央新報ネット版によれば、竹下の生家、1866年創業の竹下本店が特別清算。負債額は1億1700万円という寂しい記事を先月見つけた。

★首相・岸田文雄にとっては「自民党とはこういうもの」という思いで運営しているであろうが、自民党支持者は安倍政治に慣れきってしまい、岸田が考える自民党とは様変わりしている。全体的にタカ派傾向が強まり、他方、自民党以外の日本維新の会NHK党、参政党など右派が台頭。国民民主党、あわよくば立憲民主党まで保守政党を名乗りたがる昨今、既に軸は変わり始めていて、岸田政治は穏健すぎる保守政党の扱いに見えるだろう。いつまでたっても政権の支持率が上がらず、かといって立憲民主党の支持率も全く動かないのはそのせいだが、自民党支持者は今の自民党に物足りなさを感じているはずだ。

★それとは別に自民党、いやもう全ての政治家と言ってもいいほど、政治家の器、胆力、常識も大きくずれ始めている。政治家のキャリアだけ見れば優秀なものの、最近の政治とカネの不祥事は、いまだ昭和の手口が横行しているなど情けない事案が多い。ことに更迭された法務副大臣柿沢未途や財務副大臣神田憲次の罪状を見れば、政治家以前の順法精神のかけらもない。こんなお粗末な内閣では支持も上がるはずもないし、身体検査という概念すらなくなってしまったのかと思う。政治と政党の劣化はほかの何よりも著しい。(K)※敬称略