【政界地獄耳】安倍晋三、麻生太郎、二階俊博なき宏池会&経世会のタッグ - 日刊スポーツ(2021年9月30日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202109300000059.html

★総裁選挙終盤にかけて前政調会長岸田文雄の顔つきが変わってきた。お公家集団といわれる宏池会は上品な議員が多いといわれ、岸田も前首相・安倍晋三の顔色ばかりうかがう政治家の1人だった。これまでは禅譲を当てにし、絶えず安倍にどう思われるかを気にする気の弱い代議士の1人だったといえる。ただ総裁選挙の最中に岸田は覚醒した。この決選投票の選挙結果だけ見ればいずれも安倍や副総理兼財務相麻生太郎が支える岸田政権の誕生のように見えるが、安倍や麻生、幹事長・二階俊博は岸田政権の誕生のパーツになったが主導権を持ちえたわけではなかった。

★岸田支持のある中堅議員はいう。「総裁選の最中、森友・加計事件の再検証や桜を見る会疑惑、河井夫妻1億5000万円事件などについて徹底的に調査しないのかと候補者たちはメディアに問われてきたが、幹事長代理・野田聖子以外ははっきりしない態度に始終した。それが政治とカネの疑惑に後ろ向きとか消極的ととられた部分もあるだろう。だが総裁選挙に突入した党内の同僚議員と話していると前首相や幹事長の名前が絶えず出てくる政治とカネの問題にへきえきしている議員が多い」。

★政治家の「政治」には「頭の中で思っていること」と「口に出す内容」と「それを実行する」という3種類がある。自民党ベテラン議員たちはその使い分けをして国民や役人や、党内を遊泳してきたが、それを言行一致にさせていく努力の1歩が岸田政権の色合いを決めていくのではないか。そこで忘れてはいけないのが、竹下派の領袖(りょうしゅう)で元総務会長・竹下亘が総裁選挙の最中に逝去したこと。岸田はいち早く弔問に訪れ、竹下派幹部と懇談を持った。各派閥が自主投票として腹を見せない動きに始終した中、竹下派は総裁選挙直前に岸田支持を打ち出す。かつての政治の局面で大平正芳田中角栄宮沢喜一竹下登などの自民党穏健保守をグリップしてきた十数年ぶりの宏池会経世会のタッグが決まった。そこには安倍も麻生も二階もいない。新自由主義と決別する岸田政治が始まる。そう1度にかじを切ることができるかは未知数だ。だが党内の顔色をうかがう政治を見せた瞬間、総選挙で国民はまたいつもの自民党政治に戻ったとみるだろう。岸田政治に様子をうかがいながら進める余地はない。(K)※敬称略