<解説>安倍派のみ「更迭」は異例の政治手法 国民の審判受けるべき (政治部長・関口克己さん) - 東京新聞(2023年12月15日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/296100

自民党派閥の政治資金パーティー裏金疑惑で、岸田文雄首相は安倍派の閣僚と副大臣全員を事実上更迭した。閣僚らが巨額の裏金を派閥から受け取っていたとすれば、その職責にとどまるのは適切でないのは当然だが、内閣改造のプロセスを採らずに閣僚4人を一度に交代させる異例の政治手法というのに、首相に求められる丁寧な説明と手続きは欠けている。

疑惑の焦点は最大派閥・安倍派だが、首相自身が会長だった岸田派も数千万円の過少記載が疑われている。他派閥も「政治とカネ」の問題と無縁ではない。
 安倍派議員の肩を持つつもりは毛頭ないが、「安倍派」というだけでポストを失わせるには、その決断に至った説得力のある説明が必要だ。それを欠く更迭では「なぜ切るのは安倍派だけなのか」との疑問を、同派議員はもちろん国民が持つのは当然だ。「所属する政策集団がどこかではない」との首相の釈明は、安倍派だけを代える理由になっていない。

自民党全体の金権体質を改める指導力を発揮しないまま、閣内や党役員から安倍派を排除して幕引きを図ろうとする手法は、権力を都合良く使っているように映る。


今回の更迭劇は人事が自己目的化し、物価高に苦しむ国民生活を立て直そうという視点を失っている。国民に目を向ける気持ちを持たない首相は速やかに衆院を解散し、国民の審判を受けるべきだ。