【政界地獄耳】これは「岸田降ろし」なのか? 岸田政権はとにかくトリッキー - 日刊スポーツ(2023年11月9日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202311090000063.html

★8日の衆院財金委員会で財務相鈴木俊一は首相・岸田文雄が「減税で還元する」としてきたが「過去の税収増は当初予算や補正予算の編成を通じ、政策的経費や国債償還などにすでに充てられている」と説明、還元の原資はないとした。自民党税調会長・宮沢洋一も首相は2年間の税収増分に当たる約3兆円半ばを還元するとしているが「当然、1年の減税にならざるを得ない」と否定的だ。メディアは一斉に財務省主導の岸田降ろしの狼煙(のろし)が上がったともとれる書きぶりだ。

★ただロイター電は鈴木発言のポイントを「所得減税などを行えば、行わない場合に比べ国債の発行がその分必要になる」と国債発行で行うことを書き、「(還元は)財源論ではなく国民にどのような配慮をするかとの観点で講じるものだ」とし、還元も否定していない。同日、政府は23年度の一般会計補正予算案で、国債を8兆8750億円増発する方針を固めた。10日に閣議決定20日に国会提出でスピード感を出したい模様。低支持率にあえいでいるとはいえ、国会が止まるわけでもなく、委員会は補正日程が出始め急ピッチで動きだした。また首相が「先頭に立つ」と言い出した来春の春闘を見据えた政府と経済界、労働界の3者による「政労使会議」も月内開催の準備が進む。これで財務省の岸田離れといえるだろうか。

★政権を支える麻生派の鈴木、岸田派の宮沢が財務省の言いなりに岸田降ろしに加担するか。鈴木・宮沢発言は財務省の今までの理屈の繰り返しでしかなく、役所の立場を示しただけではないか。これが尾を引けば岸田降ろしを財務省が仕掛けたことになる。逆に官邸は党内の岸田降ろしを待って「重大な決意」を口にする複雑な手も考えられる。とにかくこの政権はトリッキーだ。(K)※敬称略