(余録)茶番とは、底の見え透いた、ばかばかしい物事を指す… - 毎日新聞(2023年10月6日)

https://mainichi.jp/articles/20231006/ddm/001/070/099000c

茶番とは、底の見え透いた、ばかばかしい物事を指す。語源は江戸時代の即興寸劇だ。劇場の楽屋で茶の用意などをする「茶番」の余興が、素人に広がったといわれる(暮らしのことば語源辞典)
さて、取材する側と司会者が「茶番だ」「茶番ではない」と応酬したジャニーズ事務所の記者会見である。特定の記者やフリージャーナリストを選別し、指名しないための「NGリスト」が作られていたことが判明した。リストがどこまで考慮されたかは不明だ。だが、会見では何度手を挙げても指名されぬ取材者が激高し、会場に怒号が飛び交った。
ジャニーズ事務所などによると、リストは会見の運営を委ねたPR会社が作った。事前打ち合わせで「NG」と記した文書に気づき「絶対に(質問に)当てないとダメだ」と要請したという。なぜ、リストの会見場持ち込みを禁じなかったのか。
激高するなどした取材側を批判する声もある。ただし、性加害という重大な人権侵害が問われる場に「全体で2時間」「1社1問」と制限をつけたジャニーズ側の姿勢に問題の根はある。社名変更などで「みそぎ」を急ぐ思惑は無かったか。
ことはジャニーズに限らない。菅義偉内閣当時、首相会見が「次の日程」を理由に短時間で打ち切られ、物議をかもした。恣意(しい)的に運営される懸念をどの記者会見もはらんでいる。
もとより、多くの説明を積み残しているジャニーズだ。茶番の不信感を拭うためには、リストの経過も含め記者会見をやり直すしかない。