<ぎろんの森>政治家の公葬、問い続ける - 東京新聞(2022年10月1日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/205804

安倍晋三元首相の国葬が行われました。国葬という実施形式を巡り賛否が分かれ、国民が分断される中で追悼行事が行われたことは、極めて異常な状況でした。

東京新聞社説は当初から、首相経験者の葬儀は、外交儀礼や警備の観点から国が関与することに理解を示しつつ、「葬儀の形式や基準は法令上規定がない」として国葬として行われた場合「安倍氏の葬儀を巡って、国民の分断がさらに深まらないか懸念する」と指摘してきました。

その後も社説は繰り返し、法的根拠の欠如や、国会の議決を経ず国葬を実施する問題点を指摘し、国葬の翌二十八日には、安倍氏の追悼とは別に「安倍氏歴史的評価も定まったわけではない。『安倍政治』の検証作業は私たち自身が続ける必要がある」との決意を表明しました。

社説とは別に、一面に掲載した論説主幹評論「分断の責任、岸田首相に」には読者から「内容に賛成です。この気持ちでこれからも頑張ってほしい」「意見に大賛成。国葬は政治の私物化のようで、国民のための国葬という意識がないと感じた」などの意見が届きました。

岸田文雄首相自身も国葬の在り方に問題がなかったとは考えていないようです。「国民からさまざまな意見、批判をいただいたことは真摯(しんし)に受け止め、今後に生かしたい」と述べています。

まずは有識者から意見聴取して論点と意見を整理して、「国民のより幅広い理解を得て、国葬儀を執り行う」ために適切な金額や規模など、今後の国葬儀のあり方を検討するそうです。

私たちは、首相経験者ら政治家の公的葬儀の在り方を検討する際、国葬を前提としないことはもちろん、税金で費用を賄う妥当性についても国民の理解が得られるよう徹底議論すべきだと考えます。

近年、首相経験者の公葬は内閣・自民党合同葬が慣例化していますが、自民党本部の収入は今では七割程度が政党助成金、つまり税金ですから合同葬の妥当性についても納税者の立場から検証されて当然です。 (と)