<ぎろんの森>「正しいしつこさ」を貫く - 東京新聞(2023年4月8日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/242880

「防衛力強化資金」を新設する特別措置法案が衆院で審議入りしました。国内総生産(GDP)比1%程度で推移してきた防衛予算を、関連予算を含めて2%程度に倍増させるための法案です。

東京新聞は七日の社説「軍拡財源法案 『専守』堅持という詭弁(きべん)」で「倍増する軍拡予算は、長射程の巡航ミサイルなど他国を直接攻撃できる『敵基地攻撃能力(反撃能力)』の整備などに充てられる。岸田文雄首相は『非核三原則専守防衛の堅持、平和主義としての歩みを変えるものではない』と説明するが、詭弁ではないのか」と指摘しました。

岸田政権が昨年十二月、国家安全保障戦略を改定して盛り込んだ「軍拡路線」を推し進め、憲法九条に基づく専守防衛を形骸化させる法案で、その起点は安倍晋三政権が二〇一五年に成立を強行した安保関連法にあります。

本紙は同法施行から七年に当たる三月二十九日にも長文社説「『茶色の朝』迎えぬために」で、安保法の危うい兆候を見逃してはならない、と指摘し、先週の本欄では同法の成立日と施行日にちなむ長文社説を毎年書き続けていることをお伝えしました。

安保法を巡る一連の社説に対し、読者から「東京新聞らしい正しいしつこさ」との感想をいただきました。

「正しいしつこさ」はとてもいい表現です。権力におもねらず、かといって決して独善に陥らず、議論を重ねて正しいと信ずることを継続して主張する。言論機関として私たちが忘れてはならない姿勢を言い当てています。

六日の木曜日から「春の新聞週間」が始まりました。新聞・通信・放送各社が加盟する日本新聞協会の行事である新聞週間は毎年春と秋の二回あり、秋は一九四八年、春は二〇〇三年に始まりました。春の週間では進級や就職などの機会をとらえて、新聞購読を呼びかけています。

秋の週間では毎年、新聞の在り方を示す標語を一般から募集して発表しています。昨秋の二二年度代表標語は「無関心 やめると決めた 今日の記事」でした。

読者の皆さんが社会への関心を失うことがないよう報道や論説に努め、権力には「正しいしつこさ」で迫る。そうした新聞の役割を再確認する春の新聞週間です。 (と)