【政界地獄耳】政治の表現をあいまいにし、本質論遠ざける言い換えの点検を - 日刊スポーツ(2023年4月4日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202304040000031.html

★どこぞのこたつ記事は2日、TBS系「サンデーモーニング」で前法大総長・田中優子が防衛費を「軍事費」と表現したことがニュースだという。ちなみにこたつ記事とは取材する側が直接取材せず、テレビやラジオ、ネットで知ったことをそのまま書くことで、こたつに入りながらでも書けることからその名がついたという。話を戻すと世界の軍事費ランキングに米・中・露・印などと並んで日本もランクインしているが、その時に我が国の予算は防衛費だと表記を変えるメディアはいない。ここ数年、メディアは自ら適正、適切な言葉を使わず、和らげる表現を意図的に使ってきた。それでいて使い分けてもいる。

★今や犯罪抑止のために不可欠な防犯カメラ。しかし、運用当初は監視カメラとメディアも表記していた。いつの間にか印象が180度変わる表現が当たり前になった。しかし、その役割はいまだ監視が目的に変わりはない。同番組では先月26日にもキャスターがどの番組でも使いたがる「卒業」は使わず「降板」報告をした。これもこたつ記事になったが言葉の適切な使い方だ。売春を援助交際パパ活と言い換えたとしても、本質は変わらないことを承知で、新しい言葉やぼんやりとさせる言葉で和らげようとするやり方は社会には存在するだろう。だが、それに引きずられるメディアの表記はいかがなものか。

★本来、メディアはこの言い換えに長年腐心してきた。言葉狩りにならぬように、しかしながら差別を助長しないように注意を払い、表現の自由を守ろうとしてきた。だが昨今の言い換えは正確性に欠け、あいまいに拍車をかけるだけのものや、事の本質を避けようとするために言い換えられる場合もある。そしてそれらが政治の表現をあいまいにし、本質論を遠ざけた温床になってはいまいか。点検を急ぐべきだ。(K)※敬称略