【政界地獄耳】政府やメディアはプーチンの「言い換え」を怒れるか - 日刊スポーツ(2022年3月17日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202203170000080.html

★ここまで国際法を無視しているロシアが戦争という言葉を使うことを嫌がりロシア国営メディアは「戦争」「侵攻」「侵略」という言葉を使わず「特別軍事作戦」と言い張る茶番を今、世界中の人々は押し付けられている。2月24日にロシアの国営テレビでウラジーミル・プーチン大統領は「特別軍事作戦」の演説を開始したが、それは国連憲章第7章51条(自衛権)を理由に正義、大義ある“戦争”をしているという理屈だ。

★そもそも直前まで国境近くで演習を繰り返し、自衛権行使のためと戦争に突入するやり方は国連が生まれる前から戦争を仕掛ける側の常とう手段だ。それを目の当たりにしてプーチンの横暴や言い換えでイメージを変えるとは言語道断と怒るのはわかるが、16年、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に自衛隊が派遣された際に戦闘状態を記した部隊の日報を政府は「戦闘」を「衝突」と言い換え、国際的紛争ではなくPKO参加5原則に触れないとした。「武力衝突はあったが戦闘ではない」との珍答弁もあった。

★公約違反を「新しい判断」と言い換え、オスプレイ墜落を「不時着」と言い張る。ばくちを認める法律を「IR法」と言い換え、共謀罪を「テロ等準備罪」にそれぞれ言い換えた。そもそも改ざんを「書き換え」といい憲法改正も「解釈変更」。戦争は「平和維持活動」、武器輸出は「防衛装備移転」、汚染水は「処理水」、「脱税」「賄賂」は「記載漏れ」、中抜きは「再委託」。「募ったが募集ではない」。まだまだある。政府はマイルドに変えたいだろうが、それを受け入れるメディアも同罪だ。プーチンを批判する資格はあるか。(K)※敬称略