【政界地獄耳】中国を仮想敵と認めた公明党 - 日刊スポーツ(2022年12月15日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202212150000091.html

★10日の自民、公明両党の国家安全保障戦略など「安保3文書」改定に向けた実務者ワーキングチーム(WT)では「敵基地攻撃能力」の保有を認め、サイバー攻撃の兆候を探る「能動的サイバー防御」の導入も了解している。また5年間の防衛費総額を約43兆円とする政府側方針についても「過不足ない」と自公両党は了承した。一方、中国を巡り国家安保戦略に「戦略的な挑戦」と明記するところまでは一致。自民党は加えて国家防衛戦略に8月の日本の排他的経済水域EEZ)内へのミサイル発射を地域住民への「脅威」という文言を盛り込むよう公明党に要求。中国との関係を重視する公明党は拒否し議論は物別れに終わった。

★しかし、これもたった3日で公明党はころっと態度を変えてしまう。13日、元防衛相で実務者WT座長・小野寺五典らと自民党政調会長萩生田光一公明党同会長・高木陽介は安全保障関連3文書改定の政府案を了承。落としどころはミサイル発射に絞り「地域住民に脅威」と触れることで決着、公明党からも異論はなかったという。公明党が中国を仮想敵と認めた日だ。岸田政権は世論を戦費調達の増税論や原資をどう調達するかの議論にくぎ付けにしている間に憲法改正せずとも、中国を仮想敵国にして軍備増強に突き進む政権と変貌した。

★当の中国は新型コロナウイルスを封じる「ゼロコロナ政策」から緩和政策に転じたことで北京を中心に感染が急拡大している。今は内政対応で手いっぱいの時期だが、早晩、緊張を高める日本の軍事力強化に猛反発を始めるだろう。その時の緩衝材の役割が公明にはあったはずだった。最近では自民党の台湾接近も頻繁で、中国はこれも挑発のひとつととらえるだろう。だが、中国を名指しで「脅威」と認めた公明党の中国との関係はどんなにいい訳を重ねても修復できないかもしれない。加えて国民の中の平和の党というイメージも自公政権の間に軍拡派に変貌してしまった。(K)※敬称略