【政界地獄耳】自民党執行部の選挙戦略は昭和政治を模索 - 日刊スポーツ(2021年10月16日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202110160000067.html

★今月中には国民の審判が下るとはいえ、岸田内閣は発足してから党人事と組閣をしただけで総選挙に突入したわけだから、国民の評価はこの4年間の政権、つまり安倍・菅政権への評価になる。ことに両政権を倒したコロナ禍対策の明確な処方もいまだ政権は示すことが出来ずにいる。政治とカネの問題では、安倍・菅政権に劣らぬ、疑惑議員が党幹部と閣僚に多く抜てきされ、政権の質は安倍・菅以上に悪くなったとの評価もある。

★その岸田政権が何もしないうちから総選挙で何を問うかと問われ、首相・岸田文雄は「今回の選挙は私たち日本の国の、そして世界の未来を選択する選挙であると考えている」とし、「未来選択選挙」と言い出した。幹事長・甘利明に至っては「立憲民主党共産党と候補者の一本化をして戦う。衆議院選挙は政権選択選挙で、勝ったほうが総理大臣をとることになり、われわれの自由民主主義の思想のもとに運営される政権と、共産主義が初めて入ってくる政権のどちらを選ぶかが最大の焦点になる」と時代錯誤の説明を言い出した。

★2人の選挙の位置づけは野党共闘の脅威を見据えたものだ。自民党は先週末の世論調査の結果、24日投開票の参院静岡選挙区補欠選挙の調査結果が芳しくない。ことに補選は衆院選挙の前哨戦と位置づけられ、与党は手堅い選挙のつもりだったが、共闘に失敗した野党にまで追い上げられている。衆院選を含め今月いっぱいで決する短期決戦では流れを変えることは難しい。「未来選択」や「自由主義共産主義か」を大きなくくりで戦おうとする自民党に対して国民は明日の生活や、コロナ後の経済に不安を持つ。岸田・甘利の自民党執行部の選挙戦略は昭和政治を模索している。このずれを取り戻すのは容易なことではない。(K)※敬称略