【政界地獄耳】選挙に負けたら安倍・菅政権のせい? - 日刊スポーツ(2021年10月30日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202110300000043.html

★日曜日には衆院選挙の投開票が行われる。国民の中には安倍・菅政治への思いや怒り、コロナ禍で生活や環境が激変したことへの「元の生活に戻るかどうか」とした期待と不安も選挙の争点として見え隠れしただろう。「自分の一票で政治や生活が変わるはずがない」という心理が働くのは政治が国民のためや正義につながるというイメージが社会に定着していないからだ。政治のニュースはベテラン議員が若い議員の声を無視して押し通す話や、超法規的にものをまとめるシーン、野党が強硬に委員長のマイクを奪おうとする「強行採決反対」のシーンがよみがえるからかも知れない。

★また、野党はなんでも反対するという思い込み。今年6月までの今国会での立憲民主党の政府提案の法案賛成率はおよそ70%。ことにコロナ禍で国民生活に可及的に通すべき法案はいくつかの修正を加えて野党の賛成でスピード可決している。ところが官邸だけで決めた出来の悪い「アベノマスク」や給付金などの制度や仕組みは議会の審議を経ていないため、処理や対応が遅かったりと国民に迷惑をかけ、政治不信につながった。政府が10万円の給付を決めてから国民の手元に届くまでどれほどの時間がかかったか思い出してみていただきたい。

★首相・岸田文雄は今回の選挙を『未来選択選挙』と位置付けた。だが国民はコロナ禍の対応という過去の政府の仕事への評価をしようとしているのではないか。政治的には安倍・菅政権の通信簿の結果発表だ。ところが岸田政権はその言葉に乗じて「選挙で負ければ安倍・菅政権のせい。岸田政権の票ではない」とうそぶく。政治は連続性だ。菅政権と劇的に政策が変わったのならその言い方もうなずけるが、岸田政権は前幹事長・二階俊博や前首相・菅義偉を排除して代わりに甘利明を幹事長に据えた。これでは安倍・菅・岸田政権は負の連続を続けていると国民からは思われるだろう。投票結果でこの選挙の国民の本当の争点が見えてくるはずだ。(K)※敬称略