【政界地獄耳】暗雲政権運営テコ入れ、橋下氏の民間入閣も - 日刊スポーツ(2021年11月1日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202111010000095.html

★選挙が終わって与野党の選挙関係者が口々に「これほど手応えのない選挙は初めて」「こんな選挙は初めて」と不安を訴える。考えられる原因は首相・岸田文雄の就任からわずか27日。2週間程度の時間しかなかった短期決戦であったこと。何より、各メディアや政党が調査する世論調査の結果がまちまちで、信頼に足るかどうか測りかねた。だが、最大の難題はコロナ禍の最中の選挙戦があまりにも勝手が違ったことだろう。地元で集会が開けない、握手ができないなど、選挙セオリーが大規模にできない歯がゆさはすべての陣営で苦労したはず。事務所やスタッフ、支持者からコロナ感染者を出せば選挙戦どころではなくなると慎重な活動を強いられた。

★午後8時の開票直後から与野党ベテランの苦戦が続き、選挙区で議席を獲得できないという報が相次いだ。「与野党ともに70代以上の議員の苦戦が目立つ。浮動票が動きだすときは与党より野党に票が出やすいというセオリーが崩れたのではないか。浮動票は与野党という枠組みではなく、高齢の議員に厳しい審判を下しているようだ」(野党選対関係者)。自民党政治の古くささ、人権問題などに後ろ向きな対応は、政党色やイデオロギーの問題ではなく、年配議員の価値観が阻んでいるという有権者の判断が働いたのではないか。その結果が新しい保守勢力である維新の大躍進だろう。古い政治打破のイメージは関西だけでなく首都圏にも浸透した。若手の勢いや維新の候補者のパワーは永田町のセオリーもしのいだ。野党共闘は大きな成果を上げたといえる。

自民党幹事長・甘利明は開票直後から苦戦が伝えられ、小選挙区敗北の場合は「総裁に身を預ける。まず議席があるかどうかわからないので、そういう状況になってしっかり相談したい」と進退に言及した。苦戦の原因は自らの政治とカネのスキャンダルだ。ただ当落にかかわらず幹事長が選挙戦最終日までの3日間を地元の遊説に充てるなど、幹事長としての職務を放棄した。今回の自民苦戦の一端は甘利にもあり、責任追及は免れまい。甘利は開票番組で「議席数をかなり減らしているが、コロナ禍でいろいろと不安や不満がたまっていて、それが具体的に選挙という形で受け止められたと思う。理解いただき切れなかったところがある」とコロナ対応の失敗に国民の怒りがあったことを認めた。その意味でも有権者は安倍・菅・岸田政治の総括を求めていることがわかる。首相・岸田文雄はこの民意を無視はできない。これからの政権運営与野党伯仲政局となり、維新の与党寄りの立ち位置が明確となる。場合によっては内閣改造で元大阪府知事橋下徹の民間入閣などが焦点となる。(K)※敬称略