【政界地獄耳】自民党人事、早くも馬脚 - 日刊スポーツ(2021年10月2日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202110020000067.html

★劇的な勝利を収めた自民党新総裁・岸田文雄だが、自らを支える党人事で早くも失敗、馬脚を現した。幹事長・甘利明の指名は国民に16年の「政治とカネ」の問題で第2次安倍政権の経済再生相を辞任した経緯の記憶を掘り起こさせる。それが前首相・安倍晋三の要求したポストであろうが、その人事を受け入れ起用した岸田にすべての責任があることは言うまでもない。そもそも国会での答弁が必要な閣僚は避け、国民への説明責任を放棄するポストに訳あり議員を就けることが国民への背信行為に当たると岸田は感じなかったか。

★総務会長に抜てきされた福田達夫が自らのポストに浮かれてそこに目をつぶるとするならば、福田の党風一新の会とは何だったのかと問わねばならないだろう。福田は8月、首相・菅義偉が何とか総裁選を回避し、無投票で議論なき総裁選挙にしようとした際、正常な総裁選挙実現のために動き回った。総裁選は実現したものの、ままならないときは両院議員総会を開催するだけの署名を集め、そこで菅と幹事長・二階俊博の退陣要求を突きつける覚悟まであったという。そこまでの決意で党風一新を目指した福田は大抜てきされたからと、甘利の起用に口をつぐむのなら、党風一新という表面的な演出で総務会長ポストを手に入れた、あざとい政治家と言わざるを得ない。

★となればベテランから若手まで自民党は古い党風を継承しただけの新政権を作ろうとしただけで、今までと何も変わっていないということになる。自民党議員からは「そんなこと言っていたら人事はできない」と言われるかもしれない。「そんな人しか自民党にはいないのか」と質問したくなる国民の声を聴く力は岸田にあるか。(K)※敬称略