(政界地獄耳) 岸田「継承」で狙う麻生派総裁派閥 - 日刊スポーツ(2020年8月29日)

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自民党議員がどんなに第1次内閣と違って決して放り投げたわけではないといったところで、唐突に辞任表明すれば投げ出したと思われるだろう。首相・安倍晋三は在職記録を超えて年内ぐらいまではとどまりたいと思っていたようだが、体調と気力が許さなかったのだろう。それでも24日の病院の帰りには公務復帰を口にしており、やはり逡巡(しゅんじゅん)の末、辞任を選択したのかもしれない。ただ、国民や野党がコロナ禍などで早期の国会開会を望んだものの政府与党は10月下旬まで開会する気がなかったことなどを見れば、その予兆を首相は感じていたのかもしれない。

★さて後継総裁だが国会開会の時期を10月下旬そのままと考えれば十分総裁選挙を行うことができる。政治の停滞を作るわけにはいかないと自民党の面々は言うが会見もしない、国会を開かないとなれば既に政治の空白は続いているといえる。党内の思惑で両院議員総会での決定になりそうだが、いろいろ工作が続くだろうが国民の声を無視してもいい結果は得られないだろう。27日の麻生派幹部の緊急幹部会では総裁選挙になった場合、麻生派にいる防衛相・河野太郎の出馬は派閥として断固阻止することを確認したのではないか。かねて政調会長岸田文雄でまとめたい副総理兼財務相麻生太郎は岸田首班で派閥を総裁派閥にしておきたいのだろう。官邸中枢が岸田でまとめたいのは安倍政治の継承とともに安倍政治の負の部分の隠ぺいを受け入れる必要もあるということだろう。

★一方、党幹事長・二階俊博官房長官菅義偉を意中の第1候補に元幹事長・石破茂を担ぐ用意があると両にらみだ。菅で安倍政治を継承するのか、安倍政治から遠い石破で延命を図るのか。幹部の思惑はともかく、この1年以内に総選挙があることから議員心理は自分のポスターと抱き合わせる選挙の顔はだれかと考えるはずだ。選挙中、どの総理総裁が自分の選挙区に応援に来てくれれば有権者がたくさん集まるか、当選3、4回生の安倍チルドレンでさえ、次の選挙の顔を血眼で考えるはずだ。

★その意味では有権者が安倍政治の継承を求めるのか、安倍政治を否定するのか、週末、地元に帰りそれを探るのが若手の仕事になる。ただコロナ禍の見通しは立たず、景気の後退は手におえない状況になっていくだろう。26日に中国軍が南シナ海に向けて中距離弾道ミサイル4発を発射した。米国も大統領選挙を前に米中関係も緊迫度を増すだろう。どれも難しい政治の判断が迫られるばかり目指すことが短期間で実現できるとも思えない。首相の残りの任期、来年9月までの暫定内閣を「火中の栗を拾うのは得策か」と考えるのが総裁候補の本音だろう。国民のために立ち上がるのか、党内調整でかごに乗って担がれるのか、国民といばらの道を乗り越えたいと訴える候補者はいるのだろうか。(K)※敬称略